2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510621
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
辻 星児 岡山大学, 文学部, 教授 (40108113)
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Keywords | 朝鮮資料 / 日本資料 / 朝鮮語音韻史 / 日本語音韻史 / 李朝実録 / 老松堂日本行録 / 豊海渡海日記 / 朝鮮漢字音 |
Research Abstract |
1.『李朝実録』に記録された日本語語彙 『李朝実録』には、日本の人名・地名等を当時の漢字音を使って記載した例が多数(15世紀前半までで250例以上)見られる。これらは解読が難しく、これまで全く取り上げられてこなかったが、今年度この解読の方法を考察し、かなりの数の解読ができた。これにより14世紀末から15世紀の日本語(あるいは対馬方言)の音韻状況が明らかとなった。例えば、ハ行子音の両唇摩擦性、チの非口蓋化、サ行子音の破擦性、前鼻音化、エ列音等である。既に日本語史で指摘されている点も多いものの、まとまった「外国資料」によるものとしては従来の資料を半世紀以上溯って確認することができた。また解読の方法論を確立したことも成果の一つである。 2.『老松堂日本行録』に記録された日本語語彙 『老松堂日本行録』(15世紀前半成立)には、主として日本の地名を漢字で写した記録が30例余り見られる。これらについては既に歴史学の方面から解読が試みられているが、今まで書語学的には全く研究されてこなかった。今年度、これを取り上げ、上記の『李朝実録』の研究と関連付けながら研究を進めた。その結果、従来の歴史学からの研究の不備や誤り.(唐加島をトウガシマ(頭島)とする誤り等)、補強(余毛時羅をヱモンシラウとする解読等)、新しい提案(牛澹をシホヤに当てる可能性等)などを提出することができ、同時に上記1.との表記態度の違いも明らかになった。 3.『尊海渡海日記』に記録された朝鮮語語彙の調査 『尊海渡海日記』には、16世紀(1539年)の朝鮮語語彙が仮名書きで記録されているが、これについての言語学的研究も全体的にはなされていなかった。本年度、広島県大願寺の資料(複製)を再調査し、従来の歴史学からの解読(図録など)の不備を指摘することができた(義ウキ→ウヰ、画→昼等)。
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