2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510622
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
片桐 真澄 岡山大学, 文学部, 助教授 (80294388)
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Keywords | 台湾原住民諸語 / ヴォイス / 能格性 / ルカイ語 / フィリピン型 / 言語類型論 |
Research Abstract |
本年度の研究においては主に、台湾原住民諸語の形態・統語に関する多様な資料の収集とその整理・分析を行った。台湾原住民として正式に認定されている11族(2003年3月現在)の言語についての入手可能な文献資料(インターネットによる資料を含む)を収集するとともに、特にルカイ語とパイワン語についてはフィールドワークを行い、語りや談話などの自然発話資料、およびエリシテーションによる文法判断を含む語彙や文を中心としたデータを収集し、その整理・分析を行った。文献資料を除くこれらの資料については、現場での筆記と共にデジタルビデオや音声レコーダによる録画・録音を行い、それらをコンピュータ処理して音声・文字資料として整理を行った。得られた資料の詳細な分析は次年度に継続して行う必要があるが、これまでの分析によると、ルカイ語は音韻的・形態的には他の諸語と類似しているものの、統語的には他の原住民諸語と顕著な相違点があることが観察された。第一に、台湾原住民諸語は一般に、類型論上「フィリピン型」と呼ばれる特徴的なヴォイス体系を持つが、ルカイ語についてはフィリピン型ではなく、能動・受動に類似した二元的なヴォイス体系が観察された。第二に、最近の研究において台湾原住民諸語は一般に能格型言語であると主張されているが、ルカイ語には能格的な特徴よりむしろ対格型に近い特徴が観察された。これらのことから、ルカイ語と他の台湾原住民諸語との類似点・相違点をより明確にすることにより、台湾原住民諸語の類型的な位置づけ、能格性やフィリピン型ヴォイス体系の本質など、今日の類型論的言語研究における諸問題の解明が可能になると考えられる。次年度は、本年度に得られた資料の分析を継続して行うと共に、ルカイ語についてのより詳細な調査・分析を行い、ルカイ語と他の台湾原住民諸語との比較・対照という観点から考察を進める。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Katagiri, Masumi: "Towards a unified account of the Philippine-type voice system"Ruptures and Departures : Language and Culture in Southeast Asia (University of the Philippines). 1-14 (2002)
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[Publications] 片桐真澄: "台湾原住民諸語を巡る諸問題と言語的共生への方策"文化共生学研究. 第一号(印刷中).
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[Publications] Katagiri, Masumi: "Voice, ergativity and transitivity of Tagalog and other Philippine languages"Aspects of Austronesian Voice Systems : Pacific Linguistics. (In press).