2002 Fiscal Year Annual Research Report
生成文法理論における経済性原理の尺度としての演算量・演算複雑性に関する研究
Project/Area Number |
14510626
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
豊島 孝之 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (40311857)
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Keywords | 演算量 / 演算複雑性 / 生成文法 / 極小理論 / 経済性 / 日本語 / 受動構文 / 非項移動 |
Research Abstract |
普遍文法理論での経済性原理として演算量・演算複雑性を定式化するには、関与する構文の種類、及び類型論的比較言語数の経験的ベースを広げる必要がある。従って本年度は、問題となる言語現象の実証研究を中心に行った。 離散数学・計算機科学では、通常、演算量・演算複雑性の尺度には演算に要する時間(演算操作回数)、もしくは記憶領域量が用いられているが、生成文法理論の中で、変形・派生論を採る最新の極小理論では、融合と移動という二種の操作により各種構文が生成されると考えられている。今年度は、この構文生成操作の回数を生成文法理論における経済性原理の尺度と見なす場合、問題とされる虚辞構文、上昇構文、受動構文、例外的格付与構文、超上昇現象、等のいわゆる項移動構文を中心に種々の言語における現象の抽出を行った。 特に、日本語受動構文については、従来から問題とされてきた間接受動と呼ばれる独特の形式の分析、逆に従来あまり注意が払われていなかった直接受動構文における超上昇現象の観察等により、日本語の直接受動構文は項移動ではなく空演算子による非項移動により派生されることを解明した。この成果の途中経過は、「九州ことばの会」例会で報告発表し、国内では東北大学、東北学院大学、国外ではアメリカ合衆国のハーバード大学、マサチューセッツ工科大学の生成文法理論研究者と討議、意見交換を行い、評価を頂いた。その内容は、現在、国際学術雑誌への投稿原稿を執筆中である。
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