2003 Fiscal Year Annual Research Report
生成文法理論における経済性原理の尺度としての演算量・演算複雑性に関する研究
Project/Area Number |
14510626
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
豊島 孝之 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (40311857)
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Keywords | 演算量 / 演算複雑性 / 生成文法 / 極小理論 / 経済性 / 主要部移動 / 拡張条件 / ブレトン語 |
Research Abstract |
普遍文法理論での経済性原理として演算量・演算複雑性を定式化するには、関与する構文の種類、及び類型論的比較言語数の経験的べースを広げる必要がある。今年度は、昨年度からの継続として前半は問題となる言語現象の実証研究を中心に行い、後半から徐々に演算量・演算複雑性に関する研究に着手した。 離散数学・計算機科学では、通常、演算量・演算複雑性の尺度には演算に要する時間(演算操作回数)、もしくは記憶領域量が用いられているが、最新の生成文法理論では、融合と移動という二種の操作により句構造が生成されると考えられている。 移動操作の内、主要部付加移動は句構造生成における拡張条件に違反するため問題であったが、これは旧来からの句構造保持仮説が踏襲されているためであり、強語彙論主義に基ずく素性照合移動理論では、主要部移動を含む全ての移動を指定部への代入移動とすれば、拡張条件及び等質連鎖条件に例外条項を設ける必要なく、拡張条件は句構造構築操作の特性、等質連鎖条件は定理的帰結として還元され、公理規定する必要はないとこれまで主張して来た。 今年度は、以前その証拠として示唆したブレトン語に於いて不定動詞が定助動詞に先行して文頭に生起する構文が主要部の指定部への代入移動である可能性に対し、Borsley & Kathol(2000)が指摘した不明瞭点に応え、明示的に原理を示し、具体的な構文分析を提案し、代案としてBorsley & Kathol(2000)が主張する主辞駆動型句構造文法での線形化による分析に勝るとも劣らぬ分析が可能であることを示した。 この成果は、第6回モロッコ言語学会(モロッコ王国ラバット市モハメッド5世大学)、及び第2回中南米生成文法集会(アルゼンチン共和国ブエノスアイレス市ホアン・ラモン・フェルナンデス現存言語高等教育院)で報告発表し、後者からプロスィーディングス論文として出版予定である。
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Research Products
(1 results)