2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510645
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内藤 高 大阪大学, 文学研究科, 教授 (60188860)
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Keywords | 近代日本画 / 西欧文学芸術 / 大正時代 / 近代的自我 / 恋愛と性 / 江戸の再発見 |
Research Abstract |
上記の研究課題に従って、研究の幾つかの主要テーマを正確化すること、そのテーマに沿って特に大正・昭和初期の文献資料を収集充実化することが今年度の研究の基本的課題であった。先行研究の検討や、数名の研究者との意見交流を通して、中心となるテーマは絞られつつある。日本画家たちに次第に芽生えていく<近代的自我意識>の問題が、特に西洋から移入された様々な思想とどう結びつくのか、とりわけ恋愛や性の問題とどうかかわるのかは、まだ先行研究も少なく是非追究したいテーマとして浮上してきた。また日本画と当時の演劇との密接な関連も今回気づいた重要テーマであり、そこには西洋の直接の影響と同時に、こうした影響による刺激の下での江戸時代の再発見、いわば近代的な江戸と西洋の融合という、大正時代を特徴づける一つの側面が見えてくる。こうした観点に従って、大正当時の美術芸術雑誌、日本画家関連の単行本などを国会図書館の調査を始めとして、現在鋭意収集中であり、こうした資料を当時の文学芸術の一般的な時代的コンテクストの中で再検討することが重要な今後の課題となる。その分析は本研究の中間報告として、来年度の初期に論文として紀要など複数の研究雑誌に発表準備中である。その成果を踏まえた上で、来年度はさらに国内資料の充実化をはかるとともに、日本画家たちの西洋との直接のコンタクトを考えるために、フランス、イタリアなど海外での調査に一つの重点を置き、日本で観念的に捉えられた西欧の文学芸術意識と実際に体験された西欧とのズレなどに重点を置き分析を進めたい。
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