2002 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ宗教民謡の比較文化研究-讃仏歌と黒人霊歌にみる文化融合と大衆的創造
Project/Area Number |
14510651
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
ウェルズ 恵子 立命館大学, 文学部, 助教授 (30206627)
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Keywords | フォークロア / フォークソング / 日系アメリカ人 / 仏教 / 讃仏歌 / 移民文化 |
Research Abstract |
平成14年にはアメリカの讃仏歌について以下の内容の論文を発表した。 アメリカに浄土真宗本願寺派の団体が組織されたのは1898年、ハワイに寺ができたのはそれより早い1894年であった。以来現在に至るまで、「アメリカにおける浄土真宗はどうあるべきか」という模索が続いている。この模索と文化的推移を最もよく表しているのが、讃仏歌の変化である。北米教団は、日本語と英語をあわせて200以上の歌を持つ。拙論は、宗教歌はフォークソング(民謡)の一種であるという立場から、それらの歌の創作と取捨選択の過程を辿り、各時代の日系アメリカ人の理想と感性の特質を指摘する。 本論第一部は太平洋戦争勃発直前までを扱い、1)西洋音楽を用いての日本讃仏歌の誕生、2)ハワイにおいてイギリス人僧侶を中心に創作された138曲の英語讃仏歌、およびキリスト教会に似せた英語礼拝の始まりを分析する。日本人の宗教的感性とキリスト教との違いを示し、急速に軍国主義化していく日本とは異なるスタンスで、日本の伝統をアメリカで継続しようとする教団の姿勢を明らかにする。 太平洋戦争直前から現在までを扱う第二部では、まず3)バイリンガルな礼拝と、日英両語の讃仏歌が歌われた時代、4)日系二世の創作による児童用英語讃仏歌、を分析して、仏教をアメリカ人の生活に受け入れやすくする努力が熱心になされたことを指摘、考察する。キリスト教文化を基盤にするアメリカ文化や英語の文脈の中で、日系信者がどういう工夫をして自分の宗教観を表現したか、よりどころとなった感性の基盤は何かを論じる。1970年代まで(3)(4)の動きは活発だったが、60年代の後半から徐々に異なる動きが起きてくる。そこで最後に、5)白人信者による新しい英語讃仏歌、6)日本文化にアイデンティティーをもとめた日系三世の宗教的表現活動、を扱う。多様化した信者層が自らの宗教とアイデンティティーをどう把握しているかを検討しつつ、新仏教文化の誕生と行方を論じる。 この他に、ハワイにおける日系人の讃仏歌と妙好人について論文を執筆し始めている。また、黒人霊歌の資料を収集し始めた。書籍になっているもので書店を通じて入手可能なものはほとんどそろえたので、来年度は絶版の資料やマイクロフィルムなどについて調査と入手をはじめる。同時に、資料分析も行う。
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Research Products
(1 results)