2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520027
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉村 典久 慶應義塾大学, 法学部, 助教授 (80230811)
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Keywords | 租税合意 / 公法契約 / 行政契約 / 租税リスク / 租税リスク回避 |
Research Abstract |
今年度の研究実施による成果は次の通りである。 1、納税者と税務行政庁との合意は、特に税務調査及び租税徴収過程において頻繁に見受けられるのに対し、租税救済過程ではその数は少ない。その理由は、税務調査及び租税徴収の過程は、納税者と税務行政庁とが第三者を交えない形で直に接するいわば闇の過程であるのに対し、租税救済過程は、特に訴訟という形で裁判官という第三者が入る公開の場面であること、及び、前者において税務行政庁の判断余地の範囲は比較的広いのに対し、後者においては厳格に法規範の解釈適用が問題とされるということ等に求められよう。 2、租税法律主義の下で、税務行政庁の行動が厳格に規制されている場合、租税合意を行う余地はないし、また、その租税合意は無効である。それに対し、事実認定につき税務行政庁の比較的広い裁量が存在する領域、たとえば、課税物件の評価の場合、行政契約としての租税合意を積極的に認知し、それに対し法的拘束力を与えることにより、納税者と税務行政庁との双方にとって法的安定性と信頼性を与えることができる。 3、公法契約の原理が発達しているドイツやフランスにおいては、契約当事者双方にバランスのとれた契約規制ルールが存在しており、租税合意を行政契約と理解する限り、公法契約のルールを租税合意に及ぼすことによって租税合意をコントロールすることができる。それに対し、公法契約に関するルールが未だ確立されていない日本においては、まず、当事者対等の観点に立った租税合意に関する契約ルールを樹立することが必要である。 なお、今年度の研究成果を基礎に、平成14年11月29日、日本税務会計学会総会において、「納税義務者と税務行政庁との合意-ドイツの理論及び実務からの示唆」というテーマで研究発表を行った。
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Research Products
(1 results)