2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520027
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉村 典久 慶應義塾大学, 法学部, 助教授 (80230811)
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Keywords | 租税特約 / 解除条件 / 租税債務の成立 / 更正の請求 |
Research Abstract |
今年度の研究実施による成果は次の通りである。 (1)租税特約とは,予期しない租税負担が生じたとき契約は取り消されるか又は無効となるとする旨の契約本体に付された約款を意味する。この租税特約の法的性質は,条件実現時に契約の効力を解消する効果を持つところから,広い意味で民法上の解除条件に相当する。ただし,当該法的効果発生にかかる条件は,将来発生不確実な出来事にかかっておらず,契約成立時には既に抽象的租税債務が観念的に発生しているため,不真正の解除条件とでもいうべきものである。 (2)所得税及び法人税は所得という経済的事象を課税の対象としているため,租税特約の効力が抽象的に発生しただけでは,予期しない高額の課税というリスクは回避し得ない。したがって,契約が既に実行されている場合,納税者の予期しない租税リスクを適切に解消するためには,租税特約の法的効果実現に伴いすみやかに契約により実行した経済的成果の解消を図らなければならない。一方,契約がまだ実行されていない場合,経済的成果は発生しておらず,したがって,租税特約の効果発生により契約は解消されるため,租税リスクは解消される。 (3)租税特約の存在自体は,国税通則法施行令第6条に定める「やむを得ない事情によって解除され」には該当せず,したがって,国税通則法23条2項3号の更正の請求を正当化するものではない。この点に関し,東京高等裁判所昭和61年7月3日判決の存在が租税特約を使った納税者の租税リスク回避行動に対する阻害要因となっていることに留意すべきである。
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Research Products
(1 results)