2004 Fiscal Year Annual Research Report
投資条約の研究-投資紛争解決における仲裁の法構造と機能
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14520036
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
森川 俊孝 横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 教授 (50017597)
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Keywords | 二国間投資条約(BIT) / 北米自由貿易協定(NAFTA) / NAFTA第11章仲裁 / 国内的救済の規則 / ICSID条約 / 投資家と国家との間の国際仲裁 / 国内的救済の規則の放棄 / 仲裁判断 |
Research Abstract |
二国間投資保護条約、地域的な自由貿易地域あるいは地域統合を目的とした複数国間若しくは多数国間条約においては、投資家と国家との間の紛争が交渉などにより平和的に解決されない場合にはそれを投資家と国家との間の国際仲裁による解決を規定することが一般的になっているが、これらの投資条約における国際仲裁による解決に関する近年の動向およびその内容と特徴とをまず明らかにした。次に、投資紛争解決については19世紀以来、国内法に基づく国内裁判所による解決を主張する国と国際法の適用による仲裁等の国際的な解決とを主張する国との間において厳しい対立があった。しかしながら、上述の投資条約においては、国内的救済手続と国際仲裁のいずれの解決によるかを投資家の選択に委ねて、国内的救済の規則の適用を制限・排除するものが増えてきている。そのような傾向を明らかにするとともに、その代表的な例としてNAFTAの投資紛争解決を規定する第11章をとりあげ、NAFTAにおける国内的救済規則の放棄の意味と範囲とをNAFTAに基づいて設置された仲裁裁判所の仲裁判断の分析に基づいて検討することによって、いかなる問題と課題が生じてきているかを明らかにした。そこでは、NAFTA第1121条の規定は国内的救済の規則の放棄を意味するとしながらも、司法機関の行為(判決)による国際違法行為の場合には国内的救済を尽くす義務があるとする仲裁判断が示されており、国内的救済規則の放棄の例外が問題となってきていることを最新の資料に基づいて明らかにした。そのことは、たとえ投資条約によって国内的救済を放棄したとしても、国内的救済によって解決することが適当である問題があることを示すものであり、国際仲裁に付託する前に国内的救済を尽くす必要のある手続とそうする必要のない手続との区別の基準の明確化は今後に残されている課題であることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)