2002 Fiscal Year Annual Research Report
市場と法の役割分担の視点に基づく知的財産法の制度分析―法と経済学の実践的研究の試み―
Project/Area Number |
14520042
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田村 善之 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20197586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳川 範之 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (80255588)
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Keywords | 著作権 / 特許 / インターネット / クリック・オン契約 / 職務発明 / 補償金請求権 / 法と経済学 / 知的財産法 |
Research Abstract |
第一に,社会環境の変遷に合わせて著作権制度が変転してきたという歴史認識の下,インターネットが著作権制度に与える影響に対し,第3の波という位置づけを与えたうえで,著作権が,インセンティヴを確保するための効率的な手段となるとともに,私人の自由を過度に制約することのないように,変容していくべきであるという筆者の提言を精緻化する作業を行った。特に,アメリカ合衆国における契約価格差別理論を題材に,法と経済学の議論を紹介し,効率性を追求する立場であったとしても,著作権制度の強化が必ずしも資源配分の効率性の改善をもたらすわけではないことを明らかにし,論文として公表した。 第二に,労働市場の流動化に伴い頻発している職務発明の帰属や補償金の算定の金額を巡って元の企業と係争となるケースについて,関連事件を手掛けている東京永和法律事務所等に赴き,包括クロスライセンスがなされている場合の補償金の算定のありかた,外国出願され外国の特許となった結果,外国で利益を得た場合の準拠法選択について鑑定を書き,現場の実務的な問題を吸い上げた。そのうえで,デフォルトルールズとしての特許法35条という考え方を打ち出し,同条の趣旨を解明するとともに,発明の適度な創出のためのインセンティヴとして必要な補償金額のありかたを提言する分析を行った。近日中に研究代表者と研究分担者の共著の論文を発表する予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] 田村 善之: "効率性・多様性・自由-インターネット時代の著作権制度のあり方-"法哲学年報. 2001年号. 38-50 (2002)
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[Publications] 田村 善之: "効率性・多様性・自由-インターネット時代の著作権制度のあり方-"北大法学論集. 53巻4号. 42-61 (2002)
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[Publications] 田村 善之: "創作的表現でないところに同一性があるにとどまる場合と著作権侵害の成否(消極)-北の波濤に唄う事件"法学協会雑誌. 119巻7号. 214-229 (2002)
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[Publications] 田村 善之: "対面販売義務と卸売販売禁止義務違反と特約店販売の解約〔資生堂販売事件〕"独禁法審決・判例百選. 第6版. 248-249 (2002)
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[Publications] 田村 善之: "国境を超える取引と商標権-インターネットと並行輸入"日本商標協会誌. 47号. 3-33 (2002)
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[Publications] 柳川 範之: "ゲーム産業はいかにして成功したか-アーキテクチャ戦争の役割"モジュール化-新しい産業アーキテクチャの本質. 145-168 (2002)
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[Publications] 柳川 範之: "規制緩和と制裁の経済学"ジュリスト. 1228号. 18-24 (2002)
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[Publications] 柳川 範之: "商法改正は日本の経営をどう変えるか"ESP. 362号. 4-21 (2002)
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[Publications] 柳川 範之: "ゲーム産業にみるイノベーションの構造-リーダーシップの重要性"日本企業変革期の選択 The Japanese Firm in Transition. 337-363 (2002)
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[Publications] 柳川 範之: "企業活動の変容:ゲーム産業にみる産業構造へのインパクト"電子社会と市場経済-情報化と経済システムの変容. 69-93 (2002)
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[Publications] 柳川範之, (新宅純二郎, 田中辰雄と編著): "ゲーム産業の経済分析-コンテンツ産業発展の構造と戦略"東洋経済新報社. 380 (2003)