2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14520108
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
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Keywords | 韓国 / 民主化 / 参加 / 盧武鉉 / 選挙 / 政党 / 市民運動 / インターネット |
Research Abstract |
本研究の課題は、2002年に韓国で行なわれた選挙(統一地方選と大統領選)を題材に、民主制定着期における参加の問題を考察することである。2年目にあたる今年度は、大統領選挙に焦点をあて、新しく登場した市民運動を既存の政党システムとの関係のなかで分析した。盧武鉉が当選した大統領選挙は、ノサモ(「盧武鉉を愛する集い」の略称)の活動や「反米」運動の影響が注目されているが、分析の結果、次の点が明らかになった。ノサモは、市民社会の要求を反映しない政党政治への不満とそれに異議を唱える盧武鉉個人への支持から2000年に結成され、党内でも非主流の彼を候補に押し上げていく過程から、参加者が政治の主体として新たな大統領の誕生に関与しようと活動していった。一方、朝鮮半島の緊張が高まる中、在韓米軍装甲車による女子中学生轢死事件を契機に大きくなった運動は、単純な反米運動ではなく国内政治と連動して展開していった。北朝鮮の脅威を前提に国家安保の重要性を掲げてきた権威主義体制からの移行という過程を経てきた韓国において、対米協調を重視する保守層のこの運動への対応は、対外政策と国内政治の関連を露にし、選挙過程に影響を与えた。これら二つの運動は、2002年に突然登場したものであるが、前体制の遺産として民主化後に顕在化した問題への対応という背景がある。運動の組織化においては、インターネットでの情報提供を通じて大規模な参加を促すもので、一過的な威力はあるが、市民社会の要求を政治に反映させる制度化されたルートを確保するものではなく、その問題点は選挙後の政治過程で顕在化することになる。以上のように、大統領選挙過程での新しい運動の影響の分析を通じて、参加という側面からこの運動の特徴と限界を明確にすることができた。ただし、地方選での組織化がその後に与えた影響などは十分に検討されておらず、次年度への課題として残されている。
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Research Products
(1 results)