2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本の南洋群島統治政策と「植民地社会」の形成及び統合(1914-1946)
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14520111
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
今泉 裕美子 法政大学, 国際文化学部, 助教授 (30266275)
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Keywords | 南洋群島 / 植民地 / 沖縄 / ミクロネシア / 国際関係 / 引揚げ者(帰還者) / 移民 / 戦争 |
Research Abstract |
海軍占領期の「植民地社会」形成の初期について、海軍、外務省関係の史料、個人の手記を改めて収集しながら分析をした。一方、本年は予想されていなかった事態があり、調査地域や対象について若干の計画変更を余儀なくされた。具体的に述べれば、本研究課題の重要な対象となる組織のひとつであり、日本の南洋群島帰還者団体として唯一の全国組織「南洋群島協会」が急遽解散することになったことである。同会は本研究課題については、国内外にいる多くのインフォーマントを申請者に提供し、なおかつ、会の解散そのものが本研究課題における歴史的な事件でもあるため、その取材を基軸としながら研究を実施した。まず、「植民地社会」と「島民」との関係については、「南洋群島協会」や同会と深い関係をもっ沖縄の「南洋群島帰還者会」、「沖縄パラオ会」の現地慰霊および交流の旅に同行しながら、サイパン島、パラオ諸島(コロール島、アンガウル島、バベルダオブ島)の「島民」からインタビューを行なった。(ただしパラオ諸島は自費渡航)。よって当初計画していたアメリカ調査、ヤルート諸島調査は行ない得なかった。 南洋群島協会解散に伴なって、多くのインフォーマントが取材や史料提供の声がかり、また南洋群島協会の関連組織であり、会員も重複する「日本ポナペ会」、「南興会」への参加や会員へのインタビューを行なった。とくに個人所有の写真史料を多く複写できたことは、従来刊行物としての写真にはみられない「植民地社会」の諸相を実証するうえで有意義なものとなった。国内では、上記の調査活動の結果、日本人移民については、とくにパラオ諸島、ポナペ諸島での「植民地社会」の形成について実績をあげた。つまり、両島は南洋庁による選定移民が行なわれた地域、とくに寒冷地出身日本人の熱帯適応能力を調査するとして北海道出身者が多く、北海道出身者から多くの情報を得た。また、サイパン島では同島に移住してきている旧南洋群島各地の老人たちに聴き取りをし、またパラオ諸島の各地でも現地住民から聴き取りを行なったことが「植民地社会」を現地側から分析するうえでの貴重な情報収集となった。研究交流としては、サイパン島の地元研究者と情報交換、意見交換を行なった。これらの成果は11に報告したような研究論文として発表した。また論文以外の研究発表には、『琉球新報』(2004年7月4日)に沖縄戦60周年記念特集として組まれた「サイパン戦」なる大企画について、沖縄戦の出発点はサイパン戦であることについて企画協力をし、「本土防衛の「防波堤」-民間人の犠牲を生んだ構造」を執筆した。2004年11月28日には国立民族博物館主催「移動から空間をとらえる-21世紀の移民研究を求めて」(於一橋大学)の特別セッション「移民から『日本』を問い直す」で「『南洋群島』の形成-『南洋移民』の戦前・戦時・戦後のくらしから」を報告し、本研究の中間報告とした。
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Research Products
(3 results)