2003 Fiscal Year Annual Research Report
危機管理と行政-不測事態の発生に対応する行政管理システム確立に関する研究
Project/Area Number |
14520112
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中邨 章 明治大学, 政治経済学部, 教授 (20109804)
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Keywords | 行政 / 危機管理 / まちづくり / 安全と安心 / 自治体 |
Research Abstract |
平成15(2003)年度には、様々な側面をもつ危機管理のうち、最近、問題になることが多い「安全と安心」という課題を集中的にとり組むことにした。これは、粗暴な犯罪や落書きなどの非行が増加していることを念頭においての課題設定である。まちの安全と安心の確保に、行政はどう対応すべきか、また、住民は不測事態の発生にいかに備えるか、それらの危機管理を探ることが今年度の研究の大きな狙いになった。 従来、安全と安心は日本社会が誇るべき特質とされてきた。安全と安心を日本人は空気と同様、「タダ」と考えていることを問題視する論評が出たことさえあった(イザヤ・ペンダサン『日本人とユダヤ人』)。それが近年、崩れてきている。犯罪発生件数は、平成8(1996)年から増加の一途をたどってきた。平成14(2002)年にその数は、戦後最高の285万件に達した。現在の状況から推すと、粗暴犯や街頭犯罪、それに家庭内暴力などは、今後も増加することが予想される。一方、検挙率は1987(昭和62)年以来、急速に落ち込んでいる。2002(平成14)年の検挙率は、20%程度にまで下がってきた。これがこの先、一段と低下することが憂慮される。日本は不安を抱える列島に大きく変化したという見方すら出ている。 今年度は、まちの安全と安心の確保に、自治体は住民とどのように協働態勢を敷くか、これを中心に研究を進めた。現状では警察の対応には限界がある。自治体と住民がスクラムを組んで問題の解決にあたることが必要とされる。しかし、この協働態勢の形成に資金はかけられない。自治体の財政は、どこでも逼迫しているからである。いずれの自治体においても、資金をできるだけかけないで短期的に効果があがる手法を模索してみることが求められる。個人の自衛意識を高めるためのキャンペーンを進めること、近隣の住民を主体にした防犯対策グループを各地につくること、それらの施策に各地の自治体が積極的になることが肝心である。
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