2002 Fiscal Year Annual Research Report
セントラルバンキングとフリーバンキング論争の理論的および学説史的研究
Project/Area Number |
14530006
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
大友 敏明 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (90194224)
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Keywords | フリーバンキング / 中央銀行 |
Research Abstract |
平成14年度においては、連合王国の大英図書館およびケンブリッジ大学図書館で19世紀中葉のセントラルバンキングとフリーバンキング論争に関する資料を調査し収集した。フリーバンキング論者のH.パーネル、G.P.スクロウプらの一次文献を収集し、現在その解読を進めているところである。 現在の研究状況は次のとおりである。 (1)H.ソーントンやD.リカードウの中央銀行論者に対立してH.パーネルは、なぜフリーバンキングを唱えたのか。ソーントンは通貨発行における中央銀行の役割を強調し、リカードウはイングランド銀行の過剰発行を抑制するために裁量政策による通貨管理を主張した。これに対して、パーネルは銀行組織間での銀行券の交換決済という一種の決済システムを想定することによって銀行券の過剰発行抑止策を主張した。複数発券制度のもとでは、ある銀行の信用の膨張は発行銀行券の預金等による他行への預け入れの増加であるから負債の増加になる。この決済のための自己資本が不足すれば、倒産を余儀なくされるから、おのずと銀行の信用膨張は抑制されると説く。こうした論拠が生み出される理論的背景を研究している。 (2)地金論争では、イングランド銀行はアダム・スミスの原理に対する支持を主張し、反地金主義者の立場に立って通貨管理の必要性を否定した。しかし、1832年のパーマー・ルールでも中央銀行の裁量的な通貨管理を主張していたイングランド銀行がなぜ通貨主義に加担して1844年のピール条例に賛成したのか。反地金主義者であったイングランド銀行がなぜ通貨主義の主張者になったのかを解明している。
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