2005 Fiscal Year Annual Research Report
セントラルバンキングとフリーバンキング論争の理論的および学説史的研究
Project/Area Number |
14530006
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
大友 敏明 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (90194224)
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Keywords | フリーバンキング / セントラルバンキング / 通貨論争 / 中央銀行 / 景気循環 / 恐慌 |
Research Abstract |
17年度は、研究の最終年度にあたるが、これまでと同じように大英図書館とケンブリッジ大学図書館で資料収集を行った。そして、この調査にもとづいて「投機と信用-1825年恐慌とフリーバンキング学派-」を執筆し、これを『山梨大学教育人間科学部紀要』第7巻第2号、2006年3月に発表した。 この論文では、セントラルバンキングとフリーバンキング論争を3つの段階に分けて、通貨の過剰を肯定するセントラルバンキング学派とそれを否定するフリーバンキング学派がどのような論争を繰り広げたのかを検討した。マカロックとパーネル論争を第1段階とし、つぎにトゥックとギルバート論争を第2段階、最後にハッバードのギルバート批判を第3段階と規定して考察した。1820年代、通貨の過剰という用語には、通貨の過剰発行と信用の膨張という意味が混同されて用いられていた。パーネルもそれを混同して使用しているが、ギルバートは銀行信用を「通貨の供給」と「資本の前貸し」に区別し、銀行信用による通貨の過剰供給を否定した。しかし、銀行信用の物価騰貴への否定的な側面を強調したために、地方銀行の信用の膨張による投機の促進と恐慌への過程を指摘できなかったという欠陥をもっている。これがハッバードによる批判を生んだのである。フリーバンキング学派が銀行信用と通貨量との関連を指摘したことは最大の功績であるが、他方で地方銀行の信用の膨張を指摘できないという点では欠点をもっている。このために1840年代に恐慌の原因解明と制度改革の点で、フリーバンキング学派は支持を得られなかっと結論づけた。
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Research Products
(1 results)