Research Abstract |
平成14年度には,主に,「社会保険」をめぐるウェッブ,ベヴァリッジ,ボザンケト,ホブソン,ホブハウスらの福祉政策思想の比較研究を行うという目的を設定し,ひとまず,ウェッブ,ボザンケトらの社会保険反対論の背後にある,「進化論的社会改革思想」(ウェッブ),「理想主義的社会改革思想」(ボザンケ)との差異を明らかにするための準備作業として,ウェッブ『救貧法少数派報告』1909年,『窮乏の防止』1910年,ボザンケ『救貧法多数派報告』1909年などの一次資料をもとに研究を行った。ひとまず,ウェッブの福祉政策思想と社会進化論との関連についてのまとめの作業を行い,「ウェッブにおける社会進化と社会改良-市場・中間団体・国家をめぐって-」という論文を執筆した。またボーザンケトについては,『哲学的国家理論』などの理論的著作にも射程を広げ,研究の深化を行った。当初の作業仮説どおり国家権力中心主義(ウェッブ)と,慈善中心主義(ボザンケ)との対照がある程度明らかになったが,その理由を明かにするためにも,前者ウェッブの国家論について,平成15年度に予定していた,国内均衡対国際均衡,経済管理をめぐるケインズ,ベバレッジらの1920,30年代の議論の文脈から照射してみる作業を優先して行った。その結果,ウェッブにおける国家の役割は,第一次大戦を境に大きく変化していることが分かり,あらためて時期区分に配慮した比較が必要であることが明らかになった。特に,計画化と経済効率との関連をめぐるウェッブの思考が,具体的にいかなる歴史的経験によって裏付けられているのか,あるいはいないのかを朗かにするために,大英図書館における関連文献の収集,イギリス公文書館PROでの石炭産業国有化関係(「サンキー委員会」)の資料を収集した。
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