2003 Fiscal Year Annual Research Report
J.S.ミルの思想形成-自筆原稿「フランス滞在日記」の分析を中心にして-
Project/Area Number |
14530025
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
井上 琢智 関西学院大学, 経済学部, 教授 (30104269)
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Keywords | J.S.ミル / フランス滞在日記 / 関西学院大学図書館所蔵草稿 / ブリティッシュ・ライブラリー所蔵草稿 / セント・ランドリューズ大学所蔵草稿 |
Research Abstract |
今年の作業は、(1)セント・アンドリューズ大学図書館所蔵草稿(「日記」原本)と関西学院大学図書館所蔵オリジナル草稿との突き合わせ、(2)昨年度実施のブリティッシュ・ライブラリー所蔵草稿の翻刻の最終チェック、(3)関西学院大学図書館所蔵草稿の邦訳、(4)関西学院大学図書館所蔵草稿中、これまでの資料で不明であった1820年8月3日から8月9日までの日記の公表、であった。 (1)夏期休暇中、セント・アンドリューズ大学での資料調査と必要文献のコピーを入手し、すでに公表された資料の誤読チェックを行った。(2)フランス語、英語、ラテン語で書かれた文章の最終のネイティブ・チェックがほぼ完了したので、これら3種類の草稿の総合的な比較検討が残されてた課題である。(3)協力者による邦訳がほぼ終わった。(4)今年度初頭に日本語の資料論文「J.S.ミルのフランス滞在:空白の一週間」とより詳細な英語資料論文"The Week-long Blank in J.S.Mill's Sojourn in France : A Notebook Rediscovered"を脱稿した。現在、前者は一橋大学の関連雑誌へ投稿している。後者は、この分野で大きな影響力をもつ雑誌Utilitasへの投稿を予定している。 ミルのフランス滞在全期間の調査結果の公表には、今後多少の時間が必要である。その際、従来公刊された2種類の資料集が含む「誤読」などの問題点を明らかにすると同時に、昨年度明らかになったミルの筆跡問題の解明が必要であろう。後者については、英語・フランス語の日記の筆跡同定のための専門家による本格的な検討が必要である。このような資料原典と翻刻との異同の問題を最終的に解決するためには、現在残されている3種類の原典資料の陰影と翻刻とを同時比較可能にする資料集の作成・出版が必要である。
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Research Products
(1 results)