2002 Fiscal Year Annual Research Report
製造業におけるIT革新による生産分業構造と労働システムへの影響に関する研究
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14530060
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
富田 義典 佐賀大学, 経済学部, 教授 (90155565)
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Keywords | 労働市場 / 地域労働市場 / 技術革新 / 製造業 |
Research Abstract |
近年の労働市場構造の変化を観察するに当たり、研究対象地域を西日本の製造業を中心に発達した都市、すなわち北九州市、広島市、境市をにしぼった。各都市からの資料収集の結果、もっとも特徴的な変化は職業別労働力需給にあらわれており、生産工程労働者の労働力需要が他職業に比して、短期問のうちに崩落とも言うべき収縮をみせていることが明らかになった。 そのような生産的労働者の労働力需要の壊滅的収縮の経済的背景を探ることを本研究の主題にすえることにした。資料収集の結果、労働力需要の収縮の背景としては、(1)製造業の低付加価値部門の海外移転が生産労働者への労働力需要を収縮させた、(2)生産工程でのIT化投資が労働力需要をより高熟練(すなわち非生産的・高学歴)労働力へと向かわせた、(3)(1)と(2)が相乗的に作用したなど、が考えられた。(1)は生産構造・貿易構造の変化に原因を求めるもの、(2)は技術変化に原因を求めるものである。 そこで問題は、(1)(2)の両説の作用の程度のいかん、および両作用の関連のいかんをどのようにみるかということになる。産業部門ごとに輸入比率と労働力需要構造とを対照した結果、必ずしも輸入比が高い部門が生産的労働者への需要が激しく落ち込むという関係にはないことがわかった。したがって上述した労働力需要構造の変化はおもに上記の(2)の作用、すなわち技術的要因によりもたらされたものであることが明らかになった。 しかしながら、上記の両要因・両作用の質的関連が必ずしも明らかにはならなかった。その点は両要因の作用の過程の分析をとおして明らかにされるはずである。次年度はその点への探索に研究の力点を置くことになる。
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Research Products
(1 results)