2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14530078
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐藤 卓利 立命館大学, 経済学部, 教授 (60178746)
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Keywords | 介護保険 / 在宅福祉サービス / ホームヘルプサービス / 福祉公社 / 第3セクター |
Research Abstract |
2000年4月より実施された介護保険制度は、在宅高齢者福祉サーピスの供給主体再編をもたらした。従来の措置制度の下で、市町村ないしそこから委託を受けた社会福祉協議会等の準公的機関が主たる供給主体であったが、介護保険制度の下で、営利・非営利を問わない民間企業の介護サービス市場への参入が開始されたのである。当初の混乱もようやく落ち着きを見せはじめた2002年現在の状況を、マクロ的には厚生労働省が主催した「全国介護保険担当課長会議」の資料等によって整理しつつ、ミクロ的状況について「広島市福祉サービス公社」を事例に分析した。 同公社のような自治体福祉公社は、1980年代に「住民参加型福祉」のモデルとして注目を浴びたが、介護保険制度下では、総じて苦しい経営状況を余儀なくされている。同公社も例外ではなく、2000年度は約2億円の赤字を出した。介護保険導入以前からの同公社を巡る議論を、広島市議会での議員質問と市側の答弁をフォローしながら整理した。同公社に経営的自立を迫る議員と、その必要性を認め経営合理化に苦慮する理事者側の姿を明らかにした。さらに同公社および同公社労組への数度にわたる聴き取りにより、措置制度以来の同公社ホームヘルプ事業の歴史を洗い出し、生活困難ケースヘの公的機関によるホームヘルプ事業の必要性を指摘した。 介護保険制度の下で、同公社のような自治体福祉公社が存続するためには、民間事業者では対応困難なケースに対しても福祉的サービスを提供する機関として市民からの認知を得る努力が必要である。また介護サービス市場は、完全な市場ではなく消費者に「自己責任」を100%求めることも不可能である。とりわけサービスの質を担保するには、保険者である市町村が直接サービス部門を持つか、あるいは公社のような準公的機関の存続も政策的選択肢としてあってよいと考える。
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Research Products
(1 results)