2002 Fiscal Year Annual Research Report
英国資本主義の発展および変化の過程におけるジェンダーとエスニシティ
Project/Area Number |
14530099
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
奥田 伸子 名古屋市立大学, 人文社会学部, 助教授 (00192675)
|
Keywords | 女性史 / イギリス / 第2次世界大戦 / 戦後復興 / ジェンダー / 公的領域 / 移民女性 |
Research Abstract |
本年度は研究計画の初年度として、申請者の研究が最も進行している第2次世界大戦からアトリー内閣期のイギリス社会における研究に集中した。近年、アトリー内閣期のイギリス社会にかんする研究の進展はイギリス、日本ともに著しい。まず、こうした研究のおよび女性史の近年の進展にかんして徹底的なサーヴェイを行った。その結果、戦争期〜戦後期のイギリスの戦後政策にジェンダーの視点が欠落していていたこと、また、それにかんする研究の欠如が確認できた。この問題意識に基づき、この時期の女性と政策との関連を示すことが期待できる資料収集を行った。資料はマイクロ資料を中心に、イギリス政府資料、労働党女性部関連資料、女性議員に関連する資料、議会関連資料、女性団体にかんする資料、Mass Observationによる資料である。本年度の後半は、これらの資料をもとに「イギリス戦後復興政策とジェンダー」というテーマで論文を準備している。この論文は15年度中に発表を予定している。この論文においては、戦争中の女性議員の議会内外での活動を中心に分析する。主たる論点は、(1)女性議員が戦後復興政策の策定において女性の登用を精力的に要求していたのにもかかわらず、政府が消極的であった、(2)その一方、女性議員が代表していたのは主として専門職女性であり、専門職女性については男女の平等を主張する一方、女性一般については性的役割分担にもとづいた将来像をえがいていた、(3)1945年の総選挙は女性議員の世代交代をもたらし、労働党の大勝に乗って女性議員が数多く当選したものの、階級をジェンダーよりも重要視する観点のために政策の継続性が失われた、というものである。なお、移民女性の積極的導入をおこなった戦後の女性労働力政策は、エスニシティの観点から分析することも必要である。この点についてもすでに資料収集が進んでいる。
|