2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14530109
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
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Keywords | 所得再分配 / リスク回避度 / 失業 / 所得格差 |
Research Abstract |
所得再分配政策を支持するのは誰か?」:「くらしと社会に関するアンケート調査」(大竹(2002))を用いて、所得格差の認識と所得再分配政策の支持の関係について実証分析を行った。再分配政策強化への支持が強いのは、性別では、女性より男性、所得階層では、低所得者の方であった。雨傘を携行する最低降水確率で測ったリスクに対する態度の指標を用いると、リスク回避度が高い人ほど所得再分配の強化を支持している。一方で、このリスク態度をコントロールした上でも、自営業者は、再分配政策の強化に対して反対する可能性が高い。 金銭的変数で制御してもなお、失業経験、失業不安をもった回答者は、再分配強化政策を支持している。ただし高齢者は、失業経験や失業の不安があったとしても、それゆえに所得平準化を求めるようにはなっていない。労働市場からの退出が間近であることが理由として考えられる。消費水準の落ち込みや、予想所得変動は、再分配政策支持と負の相関が見い出された。 全体的な階層上昇性および下降性の高まりは有意でなかったが、「貧困家庭・ホームレスが増加した」と認識している人々は、再分配の強化には賛成する確率がかなり高い。5割前後の人びとがさまざまな経済格差の拡大を実感しているものの、それらの格差自体が所得平準化政策への選好を左右してはいない。利他主義的な考えは再分配支持につながっている。日本社会における機会の平等や階層移動性は、それ自体では有意な影響力をもたないが、「階層移動性は高い方がよいにも関わらず、実際には低い」といった「規範と現実のギャップ」を感じている人々は、結果の平等としての所得平準化を求める傾向があった。
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[Publications] 大竹文雄, 太田聰一: "デフレ下の雇用対策"日本経済研究. No.44. 22-45 (2002)
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[Publications] 大竹文雄, 山鹿久木: "定期借家の実証分析"日本不動産学会誌. No.60, Vol.16 No.1. 54-64 (2002)
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[Publications] KOHARA, Miki, Fumio Ohtake, Makoto Saito: "A Test of the Full Insurance Hypothesis : The Case of Japan"Journal of the Japanese and International Economies. Vol.16 No.3. 335-352 (2002)
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[Publications] 谷坂紀子, 大竹文雄: "雇用削減行動と株価"リストラと転職のメカニズム. 11-23 (2002)
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[Publications] 澤野孝一朗, 大竹文雄: "私的医療保険需要の決定要因:入院診療と医療費負担"医療と社会. Vol.12 No.3. 1-20 (2002)
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[Publications] 太田聰一, 大竹文雄: "企業成長と労働意欲"フィナンシャル・レビュー. 第67号. 4-34 (2003)
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[Publications] 大竹文雄, 大内伸哉, 山川隆一編: "解雇法制を考える-法学と経済学の視点"勁草書房. 286 (2002)