2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14530158
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長谷川 信次 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90218446)
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Keywords | 対日直接投資 / 外資系企業 / OLIフレームワーク / 戦略提携 / 後天的資産 / 撤退 / 系列 |
Research Abstract |
最終年度では、文献調査、データ収集、研究者との意見交換に加えて、自動車・同部品産業および電子デバイス産業を中心に在日外資系企業へのヒヤリング調査を行なった。結果、以下の通り、外資系企業の新しい経営戦略を取り入れて対日直接投資をモデル化する上での有力な手がかりを得た。 ・日本に特徴的な企業間取引を参入障壁とする見方とは逆に、そうした取引慣行への配慮こそが、外国企業にとってあらたなビジネス機会を広げる可能性をもつ。たとえば自動車産業では、セットメーカーとサプライヤーの摺り合わせによる濃密な取引関係が、最終製品の品質とコスト、開発効率を高次でバランスさせる上で不可欠である。外国のサプライヤーによる在日子会社の設立は、グローバルプレイヤーとして生産拠点の国際分散化を急速に進めつつある日本のセットメーカーとの取引開拓の窓口の役割を演じる可能性がある。 ・近年、進展する自動車の電子化は、自動車の製品構造の変革を促し、脱系列化への引き金となりうる。製品構造の変化はまた、価値連鎖における分業関係の再編を促し、その過程で、日本メーカーにとって取引相手のスイッチング・コストは相対的に低下するため、結果として外国企業にとってのビジネスチャンスが広がる。 ・自動車の電子化をめぐって、制御ユニットのソフトウェアやユニット間のインタフェース/プロトコルの標準化が進みつつあり、欧州と米国で進行中の標準化との間でレースの様相を呈している。標準化レースをめぐる企業の戦略的行動の中では、外国への直接投資はみずからの競争優位(O)を高める手段として位置づけられ、自動車産業に関する一大クラスターを形成する日本の立地優位性(L)が高まる可能性がある。 こうした新たな知見を整理・取りまとめ、OLIの枠組みに即して外国企業による対日直接投資を理論的に再構築し、その成果は今年度中に学会報告、学会誌等への論文投稿を行う予定である。
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