2002 Fiscal Year Annual Research Report
複式簿記の歴史性と論理に関する研究―16世紀のドイツ固有の簿記とイタリア簿記―
Project/Area Number |
14530180
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
土方 久 西南学院大学, 商学部, 教授 (40069711)
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Keywords | 借方・貸方 / 仕訳帳(日記帳) / 元帳(金銭帳・商品帳) / 簿記の検証 / 口別損益計算 / 期間損益計算 / 残高勘定 / 貸借対照表 |
Research Abstract |
「複式簿記とは何か」。世界最初の簿記書"Summa"が1494年にL.Pacioliによって刊行されて以来、イタリア簿記が移入される16世紀前半、イタリア簿記に同化していく16世紀後半、従って、「ドイツ簿記の16世紀」を解明しようとするものである。 平成14年度は、イタリア簿記が移入されるまでの16世紀前半、具体的には、"Summa"に遅れること4半世紀後の1518年にH.Grammateus、1537年にE.von Ellenbogenによって刊行された簿記書、さらに、1531/1546年にJ.Gottliebによって刊行された簿記書では、ドイツ固有の簿記が見出されるだけに、これがどのように展開されたのか、それぞれの背後にある「歴史性」、それぞれの根底にある「論理性」を想像ないし創造している。まずは、帳簿記録の特色として、日記帳と仕訳帳の混同もさることながら、元帳が「商品帳」と「金銭帳」に分類される根拠-最終的には、商品帳に計算される「口別損益の合計」と、金銭帳に計算される「現金残高または債務残高」との一致-、さらに、帳簿締切の特色としては、期末棚卸の導入によって、口別損益計算から期間損益計算への移行もさることながら、「簿記の検証」こそが強調される根拠-期間的には、損益集計表に計算される「期間の口別損益の合計」と、残高検証表に計算される「実在の財産余剰または財産不足」との一致-を解明した。したがって、ドイツ固有の簿記がイタリア簿記にどのような影響を与えたのか、どのように同化していくのか、さらには、複式簿記の今日のシステムにどのような影響を与えたのか、これを解明するだけの素地、見通しは得られたようである。 平成15年度は、イタリア簿記が移入されてからの16世紀後半、具体的には、1549年にW.Schweicker、1570年にはS.Gammersfelderによって刊行された簿記書、これがどのように展開されたのか、それぞれの背後にある「歴史性」、それぞれの根底にある「論理性」を想像ないし創造することによって、「複式簿記とは何か」、私なりの解答を与えたい。
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[Publications] 土方 久: "ドイツ固有の簿記の成立-Grammateus, Henricus 1518年-"『商学論集』(西南学院大学). 48・2. 1-30 (2002)
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[Publications] 土方 久: "ドイツ固有の簿記の展開-Gottlieb, Johann 1531年-"『商学論集』(西南学院大学). 48・3・4. 23-52 (2002)
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[Publications] 土方 久: "ドイツ固有の簿記の展開-von Ellenbogen Erhart 1537年-(I)"『商学論集』(西南学院大学). 49・1. 91-120 (2002)
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[Publications] 土方 久: "ドイツ固有の簿記の展開-von Ellenbogen Erhart 1537年-(II)"『商学論集』(西南学院大学). 49・2. 51-70 (2002)
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[Publications] 土方 久: "ドイツ固有の簿記の展開-Gottlieb, Johann 1546年-(I)"『商学論集』(西南学院大学). 49・1. 1-38 (2002)
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[Publications] 土方 久: "ドイツ固有の簿記の展開-Gottlieb, Johann 1546年-(II)"『商学論集』(西南学院大学). 49・2. 1-32 (2002)
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[Publications] 土方 久(編著): "近代会計と複式簿記"税務経理協会. 210 (2003)