2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14540199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 修平 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (20247208)
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Keywords | 双曲性 / ホモクリニック分岐 / エルゴード閉補題 / 部分双曲性 / 優越分解 / 連結補題 / リアプノフ指数 / エルゴード測度 |
Research Abstract |
本年度は前年度に準備していたエルゴード閉補題の拡張とその応用に関する論文を完成させた。その成果は、平成16年5月にモスクワで開催された国際会議"Differential Equations and related topics"において発表した。この結果を出発点として本課題の中心目標である高次元Palis予想(一般次元のコンパクト多様体上の微分同相写像はホモクリニック分岐を示すものか、または公理Aを満たすもので近似できる。)の証明に関する論文を書き進めた。この論文で用いた議論は2次元の場合の証明(Pujals & Sambarino, Homoclinic tangencies and hyperbolicity for surface diffeomorphisms, Ann.of Math.151(2000))とは異なり、エルゴード測度の台から出発して双曲性を構成しようとするものである。このアプローチは、これまでいくつかの国際会議で発表してきた結果、その可能性について国際的な興味を喚起しているが、議論の複雑さのため、まだ認められてはいない。そのため前年度は3次元の部分双曲性を持つ場合についてこの議論を確認し、その結果次のような考察を得た。Palis予想の証明における最大の困難であるリアプノフ指数ゼロを消去する部分は一般の場合とあまり変わらない議論が必要となるが、その後、異なるインデックスを持つ周期軌道の間のサイクルを連結補題を用いてつくり出すことで公理Aを導く部分については、一般の場合とかなりの隔たりがある。つまり、自明でない議論の追加が必要である。そこで本年度は、この部分の議論をまとめる作業を中心に行った。 新しい方向の研究については、位相的エントロピーの値が力学系の分岐によってどのように変化するかという問題に興味を持ち、コンピュータによる数値実験も含めて最近の動向を調べた。本年度は、関係する研究集会が2つ開かれたので、それらに参加した。ひとつは、「力学系研究集会(日大軽井沢研修所2005年1月6-9日)」であり、もうひとつは"Kyoto Dynamics Days 5-Trellis and related topics-(1月26日-27日)"である。この方向の研究は学生にも指導し、研究集会にも参加させて協力を得た。
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