2002 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール時空における質量場のダイナミクスの研究
Project/Area Number |
14540253
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
冨松 彰 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10034612)
|
Keywords | 一般相対論 / ブラックホール物理 / 波動現象 / 共鳴効果 |
Research Abstract |
ブラックホールとその周辺に存在する物質場との相互作用が引き起こす多様な現象は、ブラックホール物理学の重要な研究テーマになっている。本研究では、特に、質量を有する物質場における低振動数の波動の振舞に着目し、共鳴的相互作用の効果による新しい現象の発見を試みた。ブラックホールへの吸収や遠方への散乱過程を通じて、時間の経過と共に物質場の強度は次第に減少していく。今年度は、曲った時空中におけるグリーン関数の方法を用いて、質量場の波動における減衰パターンを解析した。本研究の準備的な研究では、Schwarzschildブラックホールなどの特定の時空において、一定のベキ則に従う波動テイルが最終的な減衰パターンとして出現することを見い出した。本研究では、その解析を一般の静的球対称時空の場合に拡張することに成功し、質量場の波動テールには同じ時間的減衰則が成立することを明らかにした。また、このような普遍的な減衰パターンは低振動数波動の共鳴的な後方散乱と波動の分散効果がバランスすることによって可能になることを示した。これは質量のない物質場には決して現れない共鳴効果であり、質量場独特の波動現象として観測的にも重要なものである。さらに、ブラックホール表面におけるに波動の境界条件が減衰パターンの成立に密接に関係していることも議論され、分散効果を強めるような中心からの反射波の寄与を禁止することにより、ブラックホールに特徴的な時間的減衰則が実現することが明確にされた。 一方、回転ブラックホール周辺での荷電質量場の振舞は天体物理的にも興味深い問題であり、電磁相互作用や回転の影響による共鳴励起についても解析を進めている。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] H.Koyama: "Slowly decaying tails of massive scalar fields in spherically symmetric spacetimes"Physical Review D. 65・8. 0840311-0840318 (2002)
-
[Publications] H.Koyama: "Black Hole Astrophysics 2002"World Scientific. 17 (2002)