2003 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール時空における質量場のダイナミクスの研究
Project/Area Number |
14540253
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
冨松 彰 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10034612)
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Keywords | 一般相対論 / ブラックホール物理 / 波動現象 / 共鳴効果 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、ブラックホールとその周辺に存在する物質場(質量を有する場)との相互作用が引き起こす現象に関する研究を行なった。本年度は、特に、天体物理的にも重要な問題である、一様磁場中にある回転ブラックホールによる荷電質量場の共鳴励起について考察した。従来の研究から、質量場の振動エネルギーレベルがその静止質量エネルギーより低い場合には、ブラックホールの重力による質量場の束縛状態が実現されることが知られている。特に、ブラックホールと逆の角運動量を持つ束縛状態では、ブラックホールから回転エネルギーの供給があるため、物質場の強度は時間と共に指数関数的に増大する。本研究では、このような現象におけるブラックホール周辺の一様磁場の効果に着目した。そして、荷電質量場では、ブラックホールの重力と磁場によるローレンツ力との相乗効果によって、静止質量エネルギーより高い振動エネルギーレベルにおいて束縛状態が実現することを示した。また、ブラックホールからのエネルギー供給による荷電質量場の強度の増大率における磁場依存性を明らかにした。特に注目すべき点は、電荷の正負による束縛状態のエネルギーレベルと強度増大率の相違である。この相違のため、磁場中の回転ブラックホール周辺では正または負の電荷分布が卓越し、その結果として、ブラックホール自体は周辺部とは逆の電荷を帯びることになる(電荷分布の分離)。これは回転ブラックホールが帯電ブラックホールへと変化していくことを意味している興味深い結果である。 上記の研究成果は、ブラックホールの半径と比較して、質量場のコンプトン波長や磁力線のまわりの回転運動のラーマー半径が十分に大きいという近似のもとで解析されたものである。より一般的な状況における解析は今後の課題として残されている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] A.Tomimatsu: "Relativistic Acceleration of Magnetically Driven Jets"Astrophysical Journal. 592・1. 321-331 (2003)
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[Publications] M.Takahashi: "Angular Momentum Transport from a Rotating Black Hole via Magnetohydrodynamical Accretion"Supplement of Progress of Theoretical Physics. (発表予定). (2004)