2002 Fiscal Year Annual Research Report
原子核中における中間子の性質と原子核のエキゾチックな状態
Project/Area Number |
14540268
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
比連崎 悟 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (60283925)
|
Keywords | ハドロン物理 / カイラル対称性 / パイ中間子原子 / η中間子 |
Research Abstract |
本年度の研究実績としては、まずηN系がN^*(1535)共鳴バリオンと極めて強く結合することを考慮してη-原子核の束縛系を調べることによって、N^*(1535)の核内での振る舞いに対する新たな知見が得られる可能性について詳細な研究を発展させた点があげられる。特に、ハドロン物理学において重要なカイラル対称性を考慮した2つの理論的取り扱いにおいて全く正反対の結論が導かれることを示し、その現象論的な側面について研究が進展した。この結果は既にアメリカ物理学会の専門誌に掲載されており、来年度中に更にもう1編の論文が予定されている。この理論的予測に関しては来年度(2003年12月)にドイツGSI研究所において予定されている実験により情報が得られる予定である。 更に、Sn同位体を標的としたπ中間子原子生成実験結果から原子核媒質中でのπ中間子原子の振る舞い、更にはカイラル対称性の回復状況を調べる試みが進展した。核内でのπ中間子崩壊定数について定量的な結果が得られた。 また歴史的に重要な位置を占める、中性σ中間子の核内での構造についても研究が進展し、核反応による分光学的な研究が可能かどうか理論的な検討が継続している。π中間子原子の探索に力を発揮した(d,3He)反応はその歪曲波効果のためにσ中間子生成のためには不適であることが理論的に示唆されている。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] H.Geissel他: "Deeply bound 1s and 2p pionic states in 205Pb and determination of the s-wave part of the pion-nucleus interaction"Physical Review Letters. 88. 122301-1-122301-4 (2002)
-
[Publications] S.Hirenzaki, E.Oset: "Deeply bound pionic atoms from the (γ,p) reaction in nuclei"Physics Letters. B527. 69-72 (2002)
-
[Publications] J.E.Palomm, S.Hirenzaki, E.Oset: "Chiral loops and VMD in the V->PPγ decays"Nuclear Physics. A707. 161-172 (2002)
-
[Publications] S.Hirenzaki, H.Nagahiro他: "Formation of σ Mesic Nuclei in (d,t) and (d,^3He) Reactions"Nuclear Physics. A710. 131-144 (2002)
-
[Publications] D.Jido, H.Nagahiro, S.Hirenzaki: "Medium effects to N(1535) resonance and η mesic nuclear"Physical Review. C66. 045202 (2002)
-
[Publications] H.Geissel他: "Experimental indication of a reduced chiral order parameter from 1s π -state in 205 Pb"Phys. Letters. B549. 64-71 (2002)