2004 Fiscal Year Annual Research Report
放射光粉末X線回折によるペロブスカイト型結晶の精密構造物性研究
Project/Area Number |
14540303
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
黒岩 芳弘 岡山大学, 理学部, 助教授 (40225280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 昭勝 岡山大学, 理学部, 教授 (30023154)
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Keywords | 放射光 / 粉末X線回折 / ペロブスカイト / 誘電体 / 構造解析 |
Research Abstract |
本研究では,一般式ABO_3で表されるペロブスカイト型誘電体に対して,SPring-8で放射光を用いた精密X線構造解析を行い,相転移の本質あるいは物性発現の機構を構成元素間の結合状態の変化という電子論に基づく観点から議論できるような実験的証拠を見出すことを目的としている.本年度は本研究の最終年度であり,ペロブスカイト型誘電体の相転移タイプ(強誘電的相転移または反強誘電的相転移)を類別する結晶構造上の特徴を立方晶の中に見出すことを目標に研究を行なった. いくつかの種類のペロブスカイト型誘電体の構造物性を調べてきた結果,立方晶の電子密度分布の特徴をその物質の相転移に関連づけて整理できることがわかってきた.ゾーン境界型の相転移をする物質(反強誘電体)では,例外なく立方晶において,O原子の電子密度分布がB-O間の共有結合に対して垂直な方向に伸びるという異方性が観測された.これは酸素八面体の回転に関連した特徴であり,構造上のトレランスと密接な関係があると考えている.この特徴を電子密度分布の中に見出せばそのペロブスカイト型誘電体はゾーン境界型の相転移をすると予想できる.さらに,A原子サイトがPbのペロブスカイト型反強誘電体では立方晶においてPb原子がdisorderであることもわかった.一方,B-O間の共有結合に関する電子密度の高さから,相転移温度の高低までもある程度予想可能ということもわかってきた.誘電体の物性は長距離のクーロン力と短距離の反発力の間のデリケートなバランスに因るが,共有結合の形成が後者を弱める方向に働くと考えると理解される. これらの内容の一部については,国際会議で発表すると共に論文としても公表した.また,日本結晶学会から解説記事の依頼を受けた.
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Research Products
(4 results)