2004 Fiscal Year Annual Research Report
ランダム磁場中の二次元電子状態およびその量子輸送に関する理論的研究
Project/Area Number |
14540317
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
矢久保 考介 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (40200480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 恒義 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80002236)
島 弘之 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40312392)
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Keywords | ランダム磁場二次元電子系 / 局在・非局在転移 / スケーリング理論 / 強制振動子法 / マルチフラクタル解析 / 不均一磁場転送行列法 |
Research Abstract |
本研究は、強制振動子法、有限サイズ・マルチフラクタル解析、不均一磁場転送行列法等、これまでに我々が開発した様々な数値解析手法を駆使して、ランダム磁場下の二次元電子状態および量子輸送特性を解明することを目的としている。そのため本年度は主に、実験系を意識した長距離相関ランダム磁場下の二次元連続体電子系の輸送特性に関する研究を行った。ランダム磁場下二次元電子系を実験的に実現させる一つの方法として、二次元電子面近傍に強磁性微粒子をランダムに配置するというものがある。このようなランダム磁場中の量子伝導を理論的に考えるため、まず単一の磁性微粒子が作る不均一磁場中の電子の輸送特性を反復グリーン関数方により計算した。このような磁場の特徴として、B_z=0となる閉曲線が二次元電子面上に存在することが挙げられる。電子は、この閉曲線上を蛇行しながら進行する(snake軌道)。このsnake軌道を貫く磁束により、電子はいわゆるAharonov-Bohm(AB)振動を示すことになる。反復グリーン関数法で計算されたコンダクタンスにもこのような振動が現れた。また、電子のスピンを考慮すると、電子の周りを断熱的に回転する磁場によるBerry位相の効果が見られた。さらに、電子の入射エネルギーがスピンのアップ・ダウンに応じてZeemannエネルギー分だけシフトすることから、snake軌道の有効半径が増大し、磁場の増加とともにAB振動の周期が短くなる現象を発見した。また、ランダム磁場中の電子状態における乱れの統計的揺らぎの効果を明らかにするため、臨界点における異常局在状態の統計的性質に関する研究も行った。本年度の研究では、臨界条件が明らかになっている二次元電子系、すなわち二次元シンプレクティック系に対して予備的な研究を行った。その結果、臨界点における異常局在状態は、無限系においてもなお有限の割合で存在することが明らかとなった。このことは、スケーリング理論や繰込み群理論の結論が典型状態に対してのみ成立することを示している。
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Research Products
(13 results)