2003 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物絶縁体の光励起状態と非線形光学応答に関する研究
Project/Area Number |
14540320
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠山 貴巳 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (70237056)
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Keywords | 非線形光学応答 / 銅酸化物モット絶縁体 / 光励起状態 / スピン・電荷分離 |
Research Abstract |
モット絶縁体の電荷ギャップは強い電子相関により生じる。したがって、半導体に代表されるバンド絶縁体とは本質的に異なる光学応答が期待される。特に、一次元モット絶縁体では、スピン・電荷分離に起因する新奇な光学応答現象が期待される。実際、バンド絶縁体やパイエルス絶縁体に比べて何桁も大きな三次の非線形分極率が報告されている。本研究は、モット絶縁体の代表である銅酸化物絶縁体の非線形光学応答やその舞台となる光励起状態の理論的解明を行なうことを目的としており、単一バンド・ハバード模型およびその有効模型を用いて光励起状態および非線形光学応答を調べる。 次元の違いによる光励起状態の特徴を明らかにするため、吸収スペクトルの温度依存性の計算を行なった。有効模型で記述される有限サイズのクラスターの固有状態を数値的に求め、有限温度でのスペクトルを計算した。一次元系ではスピンと電荷の自由度の分離のため、スピン間交換相互作用の大きさ以下の温度領域では顕著な温度変化は示さない。一方、二次元系では、光で誘起されたキャリアとその周りに存在するスピン自由度との相互作用が吸収スペクトルの温度変化に対して重要な働きをしていることが分かった。この成果は現在、投稿中である。 非線形光学応答には光学許容の状態だけでなく光学禁制の状態も関与する。そこで、一次元ハバード模型に対して、密度行列繰り込み群の手法を用いて光学許容および光学禁制の状態の分布を計算した。最近接格子点間のクーロン相互作用が大きく、エキシトンが形成されるようなパラメータ領域では、格子点内のクーロン相互作用が大きい場合は、光学許容と禁制の状態はほぼ縮退するが、そのクーロン相互作用が小さくなるとその縮退は外れる。現実の銅酸化物絶縁体はその縮退が外れた状況に対応すると考えられる。この成果は現在、投稿中である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] M.Takahashi, T.Tohyama, S.Maekawa: "Nonlinear optical response in two-dimensional Mott insulators"Physica B. 329(333). 918-919 (2003)
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[Publications] H.Onodera, K.Tsutsui, T.Tohyama, S.Maekawa: "Resonant two-magnon Raman scattering in two-dimensional Mott insulator"Physica B. 329(333). 775-776 (2003)
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[Publications] H.Onodera, T.Tohyama, S.Maekawa: "Resonant two-magnon Raman scattering in two-dimensional and ladder-type Mott insulator"Physica C. 392(396). 203-206 (2003)