2003 Fiscal Year Annual Research Report
パイロクロア格子構造を持つバナジウム酸化物の特異な電子状態に関する理論的研究
Project/Area Number |
14540324
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
太田 幸則 千葉大学, 理学部, 助教授 (70168954)
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Keywords | 強相関電子系 / 遷移金属酸化物 / フラストレーション / 電荷秩序 / 金属絶縁体転移 / 密度行列繰り込み群 / 擬1次元電子系 / 電荷ゆらぎ |
Research Abstract |
遷移金属酸化物は典型的な強相関電子系として知られている。本研究では、こういった物質系の電子状態を理論的観点から明らかにする。観測される特異な現象の本質を記述する最小模型を導出し、密度行列繰り込み群の手法や量子モンテカルロ法などの計算物理学的手法を用いて、その本質的期限の解明を行ってきた。特に、準1次元三角格子構造を持つ遷移金属酸化物に焦点を当て、その電荷自由度の構造的フラストレーションが、電気伝導やスピン励起にもたらす効果について調べてきた。平成15年度の主要な研究成果は次の通りである。 (1)非超伝導銅酸化物PrBa_2Cu_4O_8のCuO二重鎖の電気伝導の特異性に関して、クオータフィリングの3角格子系における電荷自由度の構造的フラストレーションが、この系の異常な電荷ゆらぎを導き、さらには電荷秩序の融解によって系を金属化しているというシナリオを、有効模型の密度行列繰り込み群の手法により明らかにした。特に、この模型の精密な基底状態の相図を決定し、電荷励起のギャップがゼロでかつスピンギャップが有限になるパラメータ領域が、現実の物質のパラメータ領域にある可能性を指摘した。 (2)パイロキシン化合物のひとつであるチタン酸化物NaTiSi2O6は、TiとOが1次元的な結晶格子を組む擬1次元強相関電子系物質であり、210Kでスピンギャップ系へと相転移する物質である。この系の相転移について、軌道秩序化がスピンギャップ相を導くというシナリオを、d-p模型のハートリー・フォック計算、強相関極限での摂動論による有効ハミルトニアンの導出、および有効ハミルトニアンの密度行列繰り込み群による計算を通して明らかにした。この成果は現在出版準備中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S.Nishimoto, Y.Ohta: "Anomalous Behaviors of the Charge and Spin Degrees of Freedom in the CuO Double Chains of PrBa2Cu4O8"Physical Review B. 68・23. 235114-1-235114-9 (2003)
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[Publications] Y.Ohta, S.Ejima, T.Nakaegawa: "Interplay between Spin and Charge Excitations in the Coupled Spin-Pseudospin Systems"Journal of Low Temperature Physics. 131. 239-243 (2003)
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[Publications] Y.Ohta, R.Amasaki, Y.Shibata: "Optical Conductivity in the CuO Double Chains of PrBa2Cu4O8"Journal of Low Temperature Physics. 131. 245-249 (2003)
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[Publications] Y.Ohta, S.Ejima, Y.Shibata, T.Nakaegawa: "Anomalous Spin Excitations in a Coupled Spin-Pseudospin Model for Anisotropic Hubbard Ladders at Quarter Filling"Physica B. 329-333. 996-997 (2003)
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[Publications] Y.Ohta, R.Amasaki, Y.Shibata: "Charge Fluctuation in the CuO Double Chains of PrBa2Cu4O8"Physica B. 329-333. 1467-1468 (2003)
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[Publications] R.Eder, Y.Ohta: "Dynamical Domain Walls and Spin-Peierls Order in Doped Antiferromagnets : Evidence from Exact Diagonalization of Small Clusters"Physical Review B. 69. 094433-1-094433-4 (2004)