2003 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物における電子軌道秩序に起因する磁性と誘電性の共存及び競合
Project/Area Number |
14540328
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮坂 茂樹 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (70345106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
十倉 好紀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (30143382)
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Keywords | 軌道秩序 / マルチフェロイクス / マンガン酸化物 / 磁場誘起誘電率変化 / BiMnO_3 / 強相関電子系 / 強誘電性 / 強磁性 |
Research Abstract |
本研究課題では、遷移金属酸化物における遷移金属サイトの電子軌道状態が磁性と誘電性に与える影響に着目し、軌道秩序によって誘起される磁気秩序や電気分極の発現の共存、競合に関する詳細を調べ、新規な強磁性巨大誘電率物質や強磁性強誘電体の実現、更にはその機構解明を目的とする。本年度は巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型Mn酸化物の母物質の一つであるTbMnO_3を対象物質として、磁場誘起巨大誘電率変化、更には強磁性強誘電性の発現の可能性を探った。 本研究において、赤外線イメージ炉を用いた還元雰囲気による浮遊帯域溶融法により、これまで得ることができなかったTbMnO_3の良質な大型単結晶を育成することに成功した。これにより、本物質の結晶学的、磁気的、電気的特性を明らかにすることが可能になった。まず、本物質では軌道秩序は1000ケルビン以上の高温で生じていると考えられている。一方、低温では放射光X線を用いた精密な構造解析の結果、本物質では50ケルビン付近で反強磁性相が出現しているが、これは磁気的、結晶学的、更に軌道秩序の観点からも非整合秩序となっていることが明らかとなった。更に低温の20ケルビン以下で、これらのスピン、格子、軌道が整合秩序となる相転移が生じている。電気的な特性としては、最も低温で出現する整合秩序相において、c軸方向にのみ自発分極が発生する。これと垂直なb軸方向に磁場をかけると、Tbの持つ巨大なスピンが磁場により揃えられ、5テスラ付近の磁場でメタ磁性転移が発生する。それと同時に、先ほどまでc軸方向に発生していた自発分極がa軸方向に向く、磁場誘起強誘電分極フロップ現象が観測された。上記のTbMnO3における誘電性の起源、磁場誘起強誘電分極フロップ現象のメカニズムなどは明らかになっておらず、今後更なる研究が必要だと考えている。但し、この現象がスピン、格子、軌道の整合秩序相においてのみ現われることや、磁場により制御可能な現象であることから、これらがスピン-格子-軌道の複合作用により出現していることは問違いがない。このような強誘電性が磁場により制御されるという現象は今までに例がなく、全く新しい物理現象を提示したという点では当初の研究目的を達成できたと考えている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Kimura et al.: "Magnetocapacitance effect in multiferroic BiMnO3"Physical Review B. 67. 180401-180404 (2003)
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[Publications] T.Kimura et al.: "Distorted perovskite with elg configuration as a frustrated spin system"Physical Review B. 68. 0604031-0604034 (2003)
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[Publications] T.Kimura et al.: "Magnetic control of ferroelectric polarization"Nature. 426. 55-58 (2003)