2004 Fiscal Year Annual Research Report
擬一次元電気伝導体のリング状結晶における電荷密度波のアハラノフ・ボーム効果
Project/Area Number |
14540347
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Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
岡島 吉俊 旭川工業高等専門学校, 助教授 (00213934)
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Keywords | 一次元電気伝導体 / 電荷密度波 / 並進運動 / リング状結晶 / アハラノフ・ボーム効果 / AB効果 |
Research Abstract |
擬一次元電気伝導体NbSe3の単結晶試料の中からチューブ状結晶を取り出し、これを集束イオンビーム装置で輪切りに加工し、NbSe3単結晶の円盤を得た。チューブ状結晶には、その中心軸に沿って円形の穴があり、輪切りに加工して得た円盤にも、中心に穴がある。この穴の周囲を残して他の部分を集束イオンビーム装置で削ることにより、NbSe3の微小リングを作製した。Inを真空蒸着することにより、微小リングに電極を取り、四端子法による測定が可能になった。 四端子法で微小リングの抵抗の温度依存性を測定したところ、ウイスカー状結晶における電気抵抗の温度依存性と定性的に一致した。このことから、微小リングは確かにNbSe3の単結晶試料であること、電荷密度波転移が起きること、集束イオンビーム装置を用いて加工を行った後でも致命的なダメージは無いことが分かった。また、電極も測定に耐えうるものであることが分かった。 低温側の電荷密度波状態において、微小リングの電流電圧特性を異なる複数の温度で測定した結果、電荷密度波の並進運動による非線形伝導が観測された。このことから、作製した微小リングは、電荷密度波の並進運動による電気伝導に関してアハラノフ・ボーム効果が起きるかどうかを明らかにするのに適した試料であることが分かった。 微小リングに流す電流を一定に保ち、リングに垂直に印加した磁場の強さを変えながら、微小リングの電気抵抗を測定した。電気抵抗の磁場依存性には、磁場に対して周期的な変動が現れているようにも見える。しかしながら、電流と磁場の両方を一定に保って抵抗の時間変化を測定したところ、磁場を変えたときと同程度の変動が観測された。このことは、ノイズの影響が無視できないことを意味している。従って、磁場に対する電気抵抗の周期的な変動は観測できていない。 電荷密度波の並進運動による電気伝導に関してアハラノフ・ボーム効果が起きるかどうかは、これまでのところ、明らかになっていない。アハラノフ・ボーム効果が起きるかどうかを明らかにするためには、測定の信号対雑音比を改善し、ノイズの影響を減らさなければならないことが分かった。
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