2002 Fiscal Year Annual Research Report
ピコ秒分光法による芳香族アミン類の励起状態プロトン解離ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
14540465
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
飛田 成史 群馬大学, 工学部, 教授 (30164007)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山路 稔 群馬大学, 工学部, 助教授 (20220361)
|
Keywords | 酸塩基平衡 / プロトン移動 / アニリン / けい光 / 置換基効果 / 溶媒緩和 / 同位体効果 / 水 |
Research Abstract |
水溶液中におけるアニリン誘導体の励起状態プロトン解離反応について,ピコ秒けい光寿命測定により検討した。アニリニウムイオンの励起一重項状態でのプロトン解離反応は,約60ピコ秒で起こり,アミノ基上あるいは芳香環上に置換基を導入すると,その速度が著しく変化することを初めて見出した。アミノ基上の水素原子をアルキル基に置換すると,プロトン解離速度は顕著に減少する。これは,プロトン受容体となる水クラスターが,プロトン移動に有利な配向を取りずらくなるためと解釈される。一方,芳香環のメタ位にシアノ基のような電子吸引性基を置換するとプロトン解離時間が数ピコ秒に減少し,逆に,メトキシ基のような電子供与性基を置換すると解離速度が著しく増加することを見出した。一方,パラ位に置換基を導入した場合は,置換基の電子的性質にかかわらず,プロトン解離速度はほとんど変化しなかった。この結果は,電気双極子遷移モーメントの方向と置換基の位置の関係に基づいて説明できることを示した。 さらに,一連のアニリン誘導体について,励起状態プロトン移動反応の自由エネルギー変化を見積もり,プロトン解離速度との関係を調べたところよい相関が見られた。すなわち,プロトン解離速度は,反応の自由エネルギー変化によって支配されており,反応前後の溶媒緩和が重要であることが分かった。また,重水中でプロトン解離速度を求めたところ,非常に大きな重水素同位体効果(約3.0-5.0)が見出された。この結果は,溶媒へのプロトン移動反応がトンネル効果によって進行していることを示唆している。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] S.Shiobara, R.Kamiyama, S.Tajima, H.Shizuka, S.Tobita: "Excited-State Proton Transfer to Solvent of Protonated Aniline Derivatives in Aqueous Solution : A Remarkable Effect of Ortho Alkyl Group on the Proton-Dissociation Rate"J. Photochem. Photobiol A. 154. 53-60 (2002)
-
[Publications] S.Tajima, S.Shiobara, H.Shizuka, S.Tobita: "Excited-State Proton-Dissociation of N-Alkylated Anilinium Ions in Aqueous Solution Studied by Picosecond Fluorescence Measurements"Phys. Chem. Chem. Phys.. 4. 3376-3382 (2002)
-
[Publications] S.Uchiyama, K.Takehira, S.Kohtani, T.Santa, R.Nakagaki, S.Tobita, K.Imai: "Photophysical Study of 5-Substituted Benzofurazan Compounds as Fluorogenic Probes"Phys. Chem. Chem. Phys.. 4. 4514-4522 (2002)