2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14540470
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
稲垣 都士 岐阜大学, 工学部, 教授 (10108061)
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Keywords | 軌道位相 / 環ひずみ / ひずみエネルギー / 結合モデル解析 / 五角安定性 / リン / ヒ素 / 多環状化合物 |
Research Abstract |
シクロヘキサンに代表される第14族元素飽和分子では6員環がもっとも安定であることが知られている。これに対して、第15族元素から成る単環状分子(XH)n(X=N, P, As)では、5員環が最も安定であることを明らかにしたそして、5員環をさまざまな様式で融合することによって、ひずみの少ない安定な新規多環状分子を設計した。 まず、第15族元素飽和環状分子の孤立電子対が、環内シグマ結合を通じて環式に非局在化する難易度と環の大きさの関係を軌道位相理論から予測した。5員環では、ひとつの原子上の孤立電子対の非結合性n軌道と両隣のビシナル位のX-X結合の反結合性σ*軌道、三つの軌道の間の位相が連続して、孤立電子対がσ結合を介して環式に非局在化しやすいことが明らかになった。 次に、孤立電子対とビシナル位のX-X結合の相互作用は、n-σ相互作用による反発とn-σ*相互作用にもとづく電子非局在化よる安定化からなる。これを結合モデル解析法で数値解析した結果、窒素では安定化が少なく、リンおよびヒ素では顕著であることが明らかになった。 これらのの結果は、ホテデスモティック反応熱によって評価される環ひずみエネルギーによって支持された。すなわち、窒素の5員環はかなりの環ひずみをもち、6員環よりひずんでいるが、リンおよびヒ素では、5員環は驚くことに負のひずみエネルギーを示し、正のひずみエネルギーをもつ6員環より安定であることが示された。 最後に、リンおよびヒ素の最も安定な5員環を融合して、これまでにない安定な新規の多環状シグマ共役分子を設計し、それらのひずみが少ないことを示し、合成化学者の標的分子として十分有望であることを示した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Jing Ma: "Pentagon Stability : Cyclic Delocalization of Lone Pairs through σ Conjugation and Design of Polycyclophosphanes"Inorganic Chemistry. 41 7. 1876-1882 (2002)
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[Publications] Jing Ma: "Pentagon Stability in Cycloarsanes"Phosphorus, Sulfur, and Silicon. 177. 1705-1708 (2002)