2002 Fiscal Year Annual Research Report
低温量子分子集合系の動的物性・現象の経路積分シミュレーションによる先験的解明
Project/Area Number |
14540472
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
衣川 健一 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (50254446)
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Keywords | 経路積分 / セントロイド / 分子動力学 / 液体水素 / 固体水素 / フォノン分散 / 構造因子 / 動的構造因子 |
Research Abstract |
本年度は以下の成果が出た。 欧州の中性子散乱実験研究者との共同研究により、液体パラ水素の微視的構造に関して、経路積分モンテカルロおよび経路積分セントロイド分子動力学法の二つの数値計算の方法による結果を比較した。その結果、両者は動径分布関数に関してはよく一致した。静的構造因子に関するZoppiらが指摘した不一致は、動径分布関数のフーリエ変換の際の異なる近似に由来することが明らかになった。実際のこの量子液体の構造を古典極限でのアナローグと比較し、実験値の液体の密度では後者は凍結してしまうことを明らかにした。従って、液体のパラ水素は大きな量子効果によって安定化されているという結論に達した。 一方、結晶のパラ水素およびその同位体であるオルト重水素について経路積分セントロイド分子動力学シミュレーションを行い、各5.4K,5.0K、ゼロ気圧におけるその単粒子運動と集団運動を解明した。この目的のために新規に標準的なセントロイド分子動力学法とParrinello-Rahman-Nose-Hoover-chain型の定温定圧分子動力学法を統合したものを開発した。フォノン状態密度と、動的構造因子に現れる集団モードに基づくフォノン分散関係を求め、考察した。固体パラ水素に対しては、フォノンエネルギーの高エネルギー端は13meVであり、これはNielsenらの以前の実験によるエネルギー領域(9meV以上)よりもかなり高い結果である。実際、パラ水素結晶の高エネルギー領域におけるフォノンエネルギーは未解決問題として種々の実験の間で結果が分かれており未解決問題であったが、本研究でその結論に対して一石を投じた。一方、結晶のオルト重水素は中性子実験の結果とよく一致した。計算されたパラ水素の等温圧縮率は実験値に非常に近かった。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] F.J.Bermejo, B.Fak, S.M.Bennington, K.Kinugawa et al.: "Microscopic structure factor of liquid parahydrogen : Monte Carlo and molecular dynamics simulations"Physical Review B. 66. 212202-212204 (2002)