2003 Fiscal Year Annual Research Report
低温量子分子集合系の動的物性・現象の経路積分シミュレーションによる先験的解明
Project/Area Number |
14540472
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
衣川 健一 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (50254446)
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Keywords | 経路積分 / セントロイド分子動力学 / 液体水素 / 固体水素 / 輸送係数 / 量子効果 |
Research Abstract |
1.結晶のパラ水素およびオルト重水素の0気圧下でのフォノン物性について経路積分セントロイド分子動力学(CMD)シミュレーションを、結晶セル変形を許す定温・定圧法に初めて拡張して行った。結晶パラ水素では既報の実験で論争が決着していなかったが、計算の結果から多くの実験よりもかなり高振動数の領域にフォノンの分枝が現れること、またオルト重水素では全ての点で計算点が実験とよく一致したことがわかった。 2.液体パラ水素の17Kにおける重要な輸送量を、CMDシミュレーションによって世界で初めて計算した。以前報告された経路積分計算と同様、CMDから計算された静的物性は実験結果をよく再現した。拡散係数、熱伝導率、ずり粘性係数は、CMDは、古典MDよりもはるかによく実験結果を予言した。古典MDでは実験値と全く合わなかった。とりわけ、CMDの結果はずり粘性係数に対してよく、5%以内のずれに収まった。計算された拡散係数と熱伝導率は少なくとも実験値と同じオーダーの値を与えた。体積粘性係数に対しては、希ガスの液体のような古典的ファン・デア・ワールス単純液体よりはるかに大きい値をとることを予言した。 3.液体パラ水素の静的構造因子について実験家の間で議論があった構造因子のピークの高さについて新たに中性子実験とCMDの比較を行い、CMDが中性子実験とよく一致することを確認した。 4.2と関連して、さらに広い温度範囲(14-32K)にわたってCMD計算を液体パラ水素に対して行った。特にずり粘性係数と自己拡散係数はどの温度でも実験値とよく一致した。また、熱伝導率の計算値はやや実験値とのずれが大きかったが、それでも3倍以内の大きさであった。また一方、古典MDでは実験結果からはるかにはずれた計算結果しか与えず、液体パラ水素の輸送係数の特徴が量子効果に由来することが明確になった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Hiroaki Saito, Hidemi Nagao, Kiyoshi Nishikawa, Kenichi Kinugawa: "Molecular collective dynamics in solid para-hydrogen and ortho-deuterium : the Parrinello-Rahman-type path integral centroid molecular dynamics"The Journal of Chemical Physics. 119(2). 953-963 (2003)
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[Publications] Yoshiteru Yonetani, Kenchi Kinugawa: "Transport properties of liquid para-hydrogen : the path integral centroid molecular dynamics approach"The Journal of Chemical Physics. 119(18). 9651-9660 (2003)
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[Publications] J.Dawidowski, F.J.Bermejo, Kinugawa: "Static structure factor of liquid parahydrogen"Physical Review B. 69. 014207-1-014207-7 (2004)
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[Publications] Yoshiteru Yonetani, Kenchi Kinugawa: "The centroid molecular dynamics approach to the transport properties of liquid para-hydrogen over the wide temperature range"The Journal of Chemical Physics. 出版中. (2004)