2002 Fiscal Year Annual Research Report
超高感度過渡吸収分光計による界面電荷再結合ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
14540483
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 隆二 独立行政法人産業技術総合研究所, 光反応制御研究センター, 主任研究員 (60204509)
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Keywords | 過渡吸収 / 電荷再結合反応 / 高感度測定 / パルスレーザー |
Research Abstract |
本年度は超高感度過渡吸収分光計の製作を行った。過渡吸収とは、励起パルス光によって生成した反応中間体による光の吸収を測定するものなので、高感度化のためには透過光強度の微小な変化を測定する必要がある。 光源は安定度を得るために、過渡吸収分光でよく使われているフラッシュランプを用いず、定常光であるハロゲンランプを用いた。光強度はあまり大きくないため、光学系での光のロスが起こらないようにレンズ等の光学系を選定した。試料を透過した光の検出にはシリコンPINフォトダイオードを用いた。得られた光電流信号から微小な変化分のみ取り出すために、交流結合アンプを用いて時間変化する成分のみを抽出した。さらに増幅した後、周波数フィルターを用いてノイズ成分を除去し、オシロスコープで計測した。過渡吸収信号の計算、分光波長の制御など、すべての測定は自作のプログラムで自動化した。その結果、10^<-6>の吸光度変化(吸光度=log ([透過光強度]/[レーザ-励起がある場合の透過光強度]))を測定できる、超高感度過渡吸収分光計を作製することができた。また、光検出器を変えることで最終的に紫外から近赤外(300nm-3000nm)までの過渡吸収スペクトルを測定することができるようになった。 製作した分光計を用いて、酸化物半導体薄膜での過渡吸収測定を行った。試料としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムの多孔質薄膜(膜圧5マイクロメータ以下)を用い、紫外線レーザーパルスでバンドギャップ励起をすることで半導体内に電子と正孔を発生させ、電子に起因する過渡吸収スペクトルとその時間変化の測定を行った。また、半導体表面に有機色素を吸着させ、その励起状態からの電子の注入反応によって生成した電子についても測定を行った。観測された再結合反応速度は励起光強度に非常に敏感であり、低い励起光強度のときにのみ意味のある結果が得られるため、新しく開発した超高感度分光計でなければ測定ができるものでなかった。これらの結果については平成15年3月の日本化学会年会で講演発表を行い、現在論文を執筆中である。
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