2002 Fiscal Year Annual Research Report
フッ素の特性を活用したタンデムカチオン環化による多環式縮合環骨格の構築
Project/Area Number |
14540488
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市川 淳士 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (70184611)
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Keywords | カルボカチオン / フルオロアルケン / プロトン酸 / 縮合環 / 二環式ケトン / タンデム環化 / Friedel-Crafts反応 / ヘリセン |
Research Abstract |
フッ素は、強い電子求引性を持ちながら、その一方で非共有電子対の働きによりα位のカルボカチオンを安定化することができる。こうした興味深い性質を利用して、gem-ジフルオロオレアルケンより位置選択的に発生させたα-フルオロカルボカチオンを、分子内のアリール基で捕捉することを試みた。アリール基を有するgem-ジフルオロオレフィンにプロトン酸を作用させると、フッ素を持たない場合とは異なり、α位のフッ素で安定化された末端カルボカチオンが発生し、その分子内Friedel-Crafts反応を行うことで、多環式縮合環が効率良く構築できることを明らかにした。ここでは、さらにF-の脱離を伴って再びα-フルオロカルボカチオンが発生し、その加水分解により5〜7員環の二環式ケトンであるテトラロン、インダノン、ベンズスベロン誘導体を与えた。 また、より穏和な条件下でカチオン環化を行うため、プロトン化の起こり易いオレフィン部を共役する位置へ新たに導入した1,1-ジフルオロ-1,3-ジエンや、ヒドロキシ基を導入したジフルオロアリルアルコールでも同様の反応を試み、より弱い酸性条件下で対応する環状化合物を得た。 さらに、中間に再度生じるα-フルオロカルボカチオンも分子内で捕捉するため、アリール基を二つ有するgem-ジフルオロアルケンを調製し、プロトン酸を作用させた。その結果、予期したタンデム環化がone-potで進行し、一挙に二つのフッ素を各々分子内アリール基で置換した四環式化合物が収率良く得られた。これらの環化生成物のうち6/6/6/6環系の生成物は、Pd-炭素を用いた脱水素反応により、ヘリセンへと誘導できた。
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