2003 Fiscal Year Annual Research Report
フッ素の特性を活用したタンデムカチオン環化による多環式縮合環骨格の構築
Project/Area Number |
14540488
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市川 淳士 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (70184611)
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Keywords | カルボカチオン / フルオロアルケン / 遷移金属錯本 / 多環式縮合環 / SN2'反応 / カチオン環化 / Friedel-Crafts反応 / ヘリセン |
Research Abstract |
フッ素置換基は、非共有電子対の供与によりα位のカチオンを安定化する。昨年度は、この性質を利用して、2つのフェネチル基を有するgem-ジフルオロエチレン1から[4]ヘリセンを合成した。すなわち、1を超強酸(FSO_3H・SbF_5)でプロトン化し、フッ素のα位にカチオンを二回発生させ、これらのカチオンを分子内の二つのアリール基でそれぞれ捕捉した。これにより1から一挙に四環式化合物を得た後、脱水素を行って[4]ヘリセンへと誘導した。 本年度は、フッ素の特性を活用したジフルオロアルケン1の簡便な合成法の開発と、超強酸に代わる金属錯体での1のカチオン環化を達成した。まず、ベンジルアニオンによる4-フェニル-2-トリフルオロメチル-1-ブテン2のSN2'反応を行い、ジフルオロアルケン1を効率良く合成することに成功した。ここでは、1-トリフルオロメチルビニル化合物のSN2'反応を有効に使って、炭素鎖の伸長とジフルオロアルケン部の構築を行っている。さらに、カチオン性のパラジウム錯体がフルオロアルケンの活性化に有効であることを見出し、これにより1から2回の分子内Friedel-Crafts反応によって四環式縮合環化合物へ容易に導けることを示した。すなわち、(CF_3)_2CHOH中で1にPd(BF_4)_2(CH_3CN)_4を作用させると、1回目のカチオン環化が進行する。続いて、フッ化パラジウムが脱離してフルオロアルケン部が再生すると、ここから再び同様の環化が起こり、[4]ヘリセンのポリヒドロ体を混合物として与える。これをPd(OH)_2-C存在下で加熱することにより脱水素し、[4]ヘリセンが得られる。このように、上述のカチオン環化反応が超強酸だけでなく金属触媒でも進行することにより、超強酸条件では不安定な基質にも適用でき、官能基を有するヘリセン類の合成も可能となる。
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