2002 Fiscal Year Annual Research Report
結晶中でのシッフ塩基類の異性化機構の解明と新規超分子プロトン移動系の構築
Project/Area Number |
14540498
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川東 利男 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (40038477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網本 貴一 九州大学, 大学教育研究センター, 助手 (60294873)
小山 弘行 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (10038490)
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Keywords | フォトクロミズム / 光異性化 / 固体反応 / 包接化合物 / 光学異性体 / サリチリデンアミン / シッフ塩基 / デオキシコール酸 |
Research Abstract |
N-サリチリデンアニリン類のフォトクロミズム現象機構の解明研究を進めた。 フォトクロミズムサイクルの戻りの過程でフェノール水素を重水素に交換した効果を初めて観測した。熱退色(熱異性化反応)は2段階で進行することが分かっていたが、第1段階目のみに同位体効果が見られ、第2段階目には同位体効果がみられないことから、第1段階目の反応速度のみにN-H結合の解裂とO-H結合の形成が関与していることが明らかになった。また、結晶中での異性化過程で、より大きな変位をする部位と考えられるベンゼン環の水素を重水素と置換しても、異性化速度への同位体効果は見られなかった。 N-(3,5-ジ-tert-ブチル-6-メチルサリチリデン)-アニリンの光着色種の熱退色反応は1段階で終了し、その速度は、メチル基を持たないN-(3、5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-アニリンの光着色種の熱退色反応速度に比べて非常に速いことが観測された。6-メチル基があると、アゾメチン基の水素や光異性化後のN-H基の水素との立体反発により、trans-keto型構造をとることができず、cis-keto型着色種も不安定化されていることが分かった。 以上より、第1段階目はcis-keto型着色種、第2段階目はtrans-keto型着色種の熱異性化による退色と判断できた。 N-サリチリデンアニリン類のフォトクロミズム現象が発現するときに経由する電子状態を解明するために、超音速ジェット冷却された電子スペクトルを測定し、フォトクロミック機構について検討した。N-サリチリデンアニリンを120℃に加熱し、孤立気相系でレーザー誘起蛍光スペクトル、分散蛍光スペクトルを測定し、ab initio法で基底状態の安定構造を計算して考察した結果、分散蛍光スペクトルの二つの蛍光成分が二つのcis-keto異性体からの発光によると推定できた。
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Research Products
(1 results)