2002 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子磁石を目指した遷移金属多核錯体の分子設計とその磁気的性質の研究
Project/Area Number |
14540533
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 元裕 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00212093)
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Keywords | 単一分子磁石 / 多核錯体 / 磁化率 / 磁気異方性 / ノンコリニア磁性 / スピンクロスオーバー錯体 / 誘電率 / ヤーン・テラー効果 |
Research Abstract |
1 困難軸型の磁気異方性を有するルテニウム二核錯体[Ru_2(ap)_4]^+(Hap=2-anilinopyridine)を構成ユニットとして、ヘキサシアノメタレート[M(CN)_6]^<3->(M=Cr,Fe,Co)を中心に集積化させた高次錯体を合成し、それらの磁化率を4-300Kの温度領域で測定した。Ru-M間の磁気相互作用が比較的小さかったため、磁気的挙動は二核ユニットの性格が支配的であることが判った。 2 最小サイズの単一分子磁石の可能性を追求して、マンガン二核錯体[Mn(III)_2(μ-O)(μ-RCOO)_2(bpba)_2]X_2,[(R, X)=(Ph, PF_6),(Ph, CIO_4),(Me, PF_6),(Me, BPh_4);bpba=N, N-bis(2-PyridyI)benzylarnine]を合成した。いずれも金属イオン周りはMn-(μ-O)軸方向につぶれた八面体六配位構造で、Mn-(μ-O)-Mn角は123度程度であった。分子として容易軸型の異方性を発現できなかったため単一分子磁石とはならなかったが、マンガン(III)としては極めて大きいD/K_B〜20Kにもおよぶ異方性を有することが明らかになった。 3 分子性磁性体の一種として興味を持たれているスピンクロスオーバー錯体[Mn(taa)](H_3taa=tris(1-(2-azolyl)-2-azabuten-4-yl)amine)の相転移前後の誘電率を測定し、スピンクロスオーバー現象がマンガン(III)の動的ヤーン・テラー効果をともなうことを明らかにした。これは従来知られている多くの鉄スピンクロスオーバー錯体には見られない珍しい挙動であり、われわれが既に観測した磁場誘起スピンクロスオーバー転移のメカニズムにも深く関連するものと考えられる。
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Research Products
(1 results)