2004 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール磁性体の磁気的性質に関する熱力学的研究
Project/Area Number |
14540534
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮崎 裕司 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70252575)
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Keywords | ナノスケール磁性体 / 超常磁性 / 磁気量子トンネリング / ナノワイヤー磁性体 / 単分子磁性体 / 熱容量 / 超微細分裂 |
Research Abstract |
バルク状態の磁性物質をnmスケールまで微小化することによって得られるナノスケール磁性体は,新しい磁気メモリーというような応用の面ばかりでなく,超常磁性や磁気量子トンネリングなどの興味深い現象を示すことで近年世界中で注目を集めている。今年度も昨年度に引き続き,ナノワイヤー磁性体[Mn^<III>(saltmen)]_2[Ni^<II>(pao)_2(py)_2](ClO_4)_2の極低温領域,および単分子磁性体[Mn_<12>O_<12>(O_2CPh)_<16>(H_2O)_4]単結晶の磁気的性質を熱力学的立場から調べた。 緩和法により,0.4〜10Kの温度範囲で[Mn^<III>(saltmen)]_2[Ni^<II>(pao)_2(py)_2](ClO_4)_2の熱容量測定を行った結果,零磁場下での熱容量では,1K以下で熱容量のアップターンが観測された。しかし,長距離秩序による磁気相転移はこの温度範囲でも見られなかった。磁場が増加するにつれて,このアップターンの大きさはだんだん小さくなったが,9Tという強磁場下でもアップターンが消えることはなかった。したがって,観測されたアップターンは常磁性不純物によるばかりでなく,核スピンの超微細分裂によるものと考えられる。 緩和法により,[Mn_<12>O_<12>(O_2CPh)_<16>(H_2O)_4]単結晶の熱容量の磁場依存性および磁場方向依存性を調べたところ,磁化容易軸に平行に磁場をかけた場合では,1T以下の磁場での熱容量に,磁化の反転が凍結する現象である磁化のブロッキングが4K付近で観測された。しかし,単結晶で磁化容易軸に垂直に磁場をかけた場合では,同磁場・同温度に磁化のブロッキングによる熱異常は見出されず,より高い磁場の2Tから3.5Tの間で磁化のブロッキングに似た熱異常が約3Kで観測され,しかも磁場強度の増加と共にその温度が降下した。
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Research Products
(2 results)