2003 Fiscal Year Annual Research Report
アマモ場の保全:沿岸海洋生態系におけるSLOSS論争の究明
Project/Area Number |
14540572
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
五嶋 聖治 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 助教授 (50153747)
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Keywords | アマモ場 / SLOSS論争 / ホッカイエビ / パッチサイズ / 人工海草 / 周辺効果 / 周辺長比 / 遭遇確率 |
Research Abstract |
人工海草区内のアマモ場生物の生息密度および環境:能取湖内の天然アマモ場周辺の砂底域に人工海草を設置した。0.8m四方の人工海草を基本単位として、小パッチ区(0.8m四方のパッチを16個、10m×10m内に配置)、中パッチ区(1.6m四方のパッチを4個配置)、大パッチ区(3.2m四方のパッチを1個配置)を設置し、アマモ場生物の定量採集を行った。出現頻度の高い優占種4種について解析した結果、ホッカイエビ、ヤマトモエビ、コツブムシは小パッチ、あるいは小・中パッチに多く生息する傾向にあり、イサザアミには明瞭な傾向はうかがえなかった。各人工海草区では、水温、塩分、流速といった環境項目には顕著な違いは観察されなかった。 ホッカイエビの移動分散および捕食者の分布:天然アマモ場内とその周囲の砂底域で、ホッカイエビとその潜在的な捕食者である肉食性魚類の個体数を昼夜に数えた結果、日中にはもっぱらアマモ場にのみ見られるホッカイエビが、夜間には周囲の砂底域に出現することが判明した。肉食性魚類の出現パターンには、昼夜の影響は見られなかった。 結論:これらの結果から、大きいひとつのパッチか、あるいは複数の小さいパッチ群かというSLOSS論争については、種特異的ではあるもの、小さいパッチ群のほうに生息密度の高い種が多い結果となり、陸上生態系とは逆の傾向にあることが明らかになった。 その理由をホッカイエビについて検討した結果、夜間にアマモ場から周囲の砂底域に出て、明るくなるとアマモ場に戻るという本種のもつ昼夜行動にその原因を求めることができる。すなわち、本種がアマモ場からのランダムな出入りを繰り返しているならば、面積に比して周辺長比が高い小パッチとの遭遇確率が高く、その結果、小さいアマモ場での生息密度が高くなったと考えられる。これらの生息地利用パターンを、アマモ場の保全策に生かす必要があるものと思われる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Chiba, Susumu: "Male-male competition selects for delayed sex change in the protandrous shrimp Pandalus latirostris"Marine Biology. 142. 1153-1157 (2003)
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[Publications] Chiba, Susumu: "Population structure and seasonal growth of the protandrous pandalid shrimp Pamdalus latirostris in Notoro Lagoon, Hokkaido"Suisanzoshoku. 51(4). 375-383 (2003)