2003 Fiscal Year Annual Research Report
侵入害虫アリが日本の在来生物相に及ぼす影響と分布拡大メカニズムの解明
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14540579
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
伊藤 文紀 香川大学, 農学部, 助教授 (50260683)
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Keywords | アリ / 生物多様性 / 種間競争 / 捕食 |
Research Abstract |
本年度も、瀬戸内海沿岸地域の外来アリ分布広域調査、廿日市市周辺におけるアルゼンチンアリ分布拡大調査用定点観察プロットの設定と定期調査、営巣場所をめぐる在来アリとアルゼンチンアリの相互作用、アリ捕食者の食性調査などを実施した。主な結果は以下の通り。(1)瀬戸内海沿岸の大阪府から山口県まで、および香川県と愛媛県においてアルゼンチンアリの分布状況を調査した。新産地は発見できず、山口県柳井市と岩国市、広島県大野町から廿日市をこえて広島市まで、および兵庫県神戸市のみが現時点の分布地であると考えられた。分布は不連続で、廿日市周辺でも少なくとも2つの空間的に隔離された個体群が存在していた。また、廿日市市をのぞくと、いずれの分布地も分布範囲は狭く、侵入してからそれほど長い時間が経っていないと考えられた。(2)廿日市市では着々とアルゼンチンアリの分布が拡大しており、昨年よりも侵入地が数か所増加した。昨年と同様に最近侵入した地点では在来アリの著しい減少は確認されなかった。(3)クロヤマアリはアルゼンチンアリが侵入した地点で激減するが、巣をマークして定期的に巣の利用者を記録したところ(昨年度より継続)、幾つかの巣がアルゼンチンアリに置きかわっており、巣の乗っ取りがクロヤマアリが駆逐される至近要因のひとつと考えられた。(4)昨年度に引き続きアリ捕食者であるニホンアマガエルの食性を調査し、本種の若齢期の餌の大部分がアルゼンチンアリであることが明らかになり、野外調査結果からは、広食性捕食者に対するアルゼンチンアリの影響は軽微なようだった。しかし、アマガエルの選好性を室内で調査すると、在来アリのいくつかの種に比べるとアルゼンチンアリの捕食量は少なく、また、アルゼンチンアリだけを餌として与えた若令個体は、3週間以内にすべて死亡し、餌としては不十分なようだった。
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Research Products
(2 results)