2003 Fiscal Year Annual Research Report
新規緑色糸状細菌の光合成電子伝達系と光合成の初期進化
Project/Area Number |
14540597
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松浦 克美 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30181689)
|
Keywords | 光合成細菌 / 紅色細菌 / 緑色細菌 / 電子伝達系 / 光合成遺伝子 / チトクロム / 銅タンパク質 |
Research Abstract |
近年、本研究代表者を含むグループで新規に自然界から単離した緑色糸状細菌Roseiflexus cantenholziiは最古の光合成細菌の性質を残している可能性が高い。この細菌から、光合成遺伝子を単離し、塩基配列を決定した。決定した12の遺伝子は、3つのクラスターを形成して存在していた。これらの遺伝子配列は、これまで知られていた別の緑色糸状細菌と、紅色細菌の中間的な性質を示した。このことは、緑色糸状細菌Roseiflexus cantenholziiの遺伝子構成が、緑色糸状細菌と紅色細菌の共通祖先に近いことを示唆する。さらに、この細菌の光合成電子伝達系を、生化学的および分光学的に解析した。生細胞では、閃光照射によって、光合成反応中心複合体に結合したチトクロムcの速い酸化と、それに引き続く再還元が100ミリ秒以内に観察された。この再還元の最適温度は、50度付近であった。この再還元の最適温度は、この細菌の生育における最適温度の50度とよく一致した。細菌細胞を破壊し調製された膜標品を用いた場合でも、閃光照射によって、チトクロムcの速い酸化と再還元が観察された。このことは、多くの紅色細菌の場合と異なり、膜結合性のチトクロムcへの電子供与タンパク質もまた、膜結合性であることを示唆した。銅を含むタンパク質であるオーラシアニンを分離調整し、光合成反応中心複合体標品に加えて、光合成電子伝達を測定すると、単離複合体標品の結合型チトクロムcの再還元が観察された。したがって、この細菌における、光合成反応中心複合体のチトクロムcへの直接の電子供与体は、オーラシアニンであると結論した。キノンの拮抗阻害剤であるHQNOを加えると、膜標品におけるチトクロムcの再還元が阻害された。以上の結果、この新規細菌の光合成電子伝達系には、オーラシアニンとキノール:オーラシアニン酸化還元酵素が含まれると考えられる。
|
Research Products
(1 results)