2003 Fiscal Year Annual Research Report
カレイ類変態期の目の移動-甲状腺ホルモンによる左右非対称な形態形成
Project/Area Number |
14540614
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田川 正朋 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教授 (20226947)
|
Keywords | ヒラメ / カレイ類 / 変態 / 左右非対称性 / 甲状腺ホルモン / 部域差 |
Research Abstract |
昨年度までの研究により、「変態期におこるT4濃度上昇」と「孵化後の日数に依存した左右のホルモン受容体の発現」との相互のタイミングにより左右の分化が決定されるというタイミング説が有力となっていた。本年度はヒラメについて以下の検討を行い、特に変態時に起こる変化の「部域差」を検討した。 1)眼の移動には、左右非対称に形成される異体類に固有の硬骨(Pb骨)が重要であることが昨年度の電子顕微鏡観察により示唆されたが、確固たる証拠はつかめていない。種苗生産されたヒラメ稚魚より、眼の移動が全く起こらなかった個体、および不完全だった個体をサンプリングし、組織学的に観察をおこなった。その結果、眼の移動の成否とPb骨形成の成否は完全に対応していた。一方、他の硬組織や軟組織の形成の成否は目の移動の成否と対応していない例が見られた。さらにPb骨が全く欠損していた奇形個体では、他の硬組織の左右性がランダムとなっていた。これらのことは、Pb骨こそが眼の移動に中心的であることを強く示唆している。 2)もし、体全体が甲状腺ホルモンに対して同様な反応を示すならば、これまで考えてきたような甲状腺ホルモン感受性が左右で異なる可能性は高くないことになる。そこで、変態期に起こる形態変化が、甲状腺ホルモンを投与する時期および体の各部で異るかを検討した。脊椎骨の形成のように「変態の有無に関わらず」形成される組織には、甲状腺ホルモン投与の時期における差異は見られなかった。一方、目の移動に中心的なPbでは、ホルモン投与の時期によって形成の程度が大きく異なった。このことは変態期に変化の起こるそれぞれの部位が、異なった反応性、あるいは異なったタイミングでの反応性を有することを示し、タイミング説の根底となっている変態期ホルモン感受性の部域差の存在が示された。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] Okada N, Takagi Y, Tanaka M, Tagawa M: "Fine structure of soft and hard tissues involved in eye migration in metamorphosing Japanese flounder (Paralichthys olivaceus)"Anatomical Record A. 273A. 663-668 (2003)
-
[Publications] Harada Y, Kinoshita I, Kaneko T, Moriyama S, Tanaka M, Tagawa M: "Response of a neotenic goby, ice goby (Leucopsarion petersii), to thyroid hormone and thiourea treatments"Zoological Science. 20. 877-882 (2003)
-
[Publications] Harada Y, Harada S, Kinoshita I, Tanaka M, Tagawa M: "Thyroid gland development in a neotenic goby (ice goby, L.petersii) and a common goby (Ukigori, G.urotaenia) during early life stages"Zoological Science. 20. 883-888 (2003)
-
[Publications] Okada N, Tanaka M, Tagawa M: "Histological study of deformity in eye location in Japanese flounder Paralichthys olivaceus"Fisheries Science. 69. 777-784 (2003)
-
[Publications] Okada N, Tanaka M, Tagawa M: "Bone development during metamorphosis of the Japanese flounder (Paralichthys olivaceus) : differential responses to thyroid hormone""The Big Fish Bang". (Eds.H.I.Browman & A.B.Skiftesvik) Institute of Marine Research, Bergen, Norway. 177-187 (2003)