2003 Fiscal Year Annual Research Report
ソテツの精子放出機構の解明と造卵器から分泌される精子誘引物質の同定
Project/Area Number |
14540616
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
高相 徳志郎 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (50295341)
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Keywords | 受精 / 精子 / 造卵器 / ソテツ / 胚珠 |
Research Abstract |
ソテツ類は、進化的にシダ植物から由来し、シダ植物同様に受精に際して精子が形成される。精子は、雄性配偶体から放出されるが、雌性配偶体から分泌された液の中で泳ぐ。 15年度では、雌性配偶体から液が分泌される前と分泌された後の細胞内の微細構造を透過電子顕微鏡で観察し、その違いを比較した。また、分泌液を採取し糖どアミノ酸について組成分析を行った。更に、精子が液の中で遊泳する様子を実体顕微鏡を用いて観察した。 液分泌に関与する雌性配偶体の造卵器周辺の細胞は、液分泌前と分泌後で二点顕著な特徴が認められた。一点は分泌前は色素体内にデンプンが多量に集積しているが、分泌後はこの集積量が少なかったことである。二点目として、分泌後は分泌前に比べて、細胞内小器官の微細構造に明瞭でない状態が認められたことである。色素体内のデンプンは分解され、これによって糖が形成されると考えられる。また、液分泌後の微細構造の不明瞭化は液の分泌に関連していると考えられる。 分泌液には糖として、ブドウ糖、果糖、ショ糖が、アミノ酸としてヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、チロシンを含むことが明らかにされた。 造卵器の周りで泳ぐ精子は造卵器の頸細胞を中心に円を描く様に動く。時折、頸細胞に近づくが、頸細胞の間を通って、卵細胞に向かうことはなかった。精子遊泳中に頸細胞を破壊すると精子はこの破壊された細胞に向かって泳ぐことが観察された。頸細胞には精子を誘導する役割があると推測される。 この研究によって、精子は雌性配偶体から分泌された液、この液の糖は雌性配偶体細胞内のデンプンに由来、の中を泳ぎ、造卵器の頸細胞によって誘引されることが明らかにされたが、卵細胞内の突入と受精には別の誘引機構が関与することが示唆された。
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