2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14540633
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
矢澤 徹 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (30106603)
|
Keywords | 甲殻類 / 血液 / ストレス / ホルモン / ロブスター / マイクロダイアリシス / 質量分析 / ペプチド |
Research Abstract |
すでにアメリカザリガニProcambarus clarkiiやアメリカンロブスターHomarus americanusなどの大きな鋏みを持つ甲殻類が鋏みを振り上げて威嚇行動をする際に、この行動に連関して血液中に未知の物質が放出されていることが突き止められた。この未知の物質を特定することが目的である。これまでに、現有設備で分析できる範囲で研究をした結果、ペプチドがもっとも有力な候補となっていたので検討した。ペプチドとして有力候補は5アミノ酸から構成される甲殻類の代表的ホルモンであるプロクトリンであるが、まずプロクトリンを検出できる検出機器を確保することからはじめた。飛行時間検出型質量分析器によりプロクトリンが分子量648付近で検出できることが、機器の性能上、確かめられた。これを検出するため先ずマトリクスとして何を用いるか検討した.その結果、最終的に絞り込まれた物質は二つで、αシアノ4ヒドロキシ桂皮酸よりも、3,5ジ・メトキシ4ヒドロキシ桂皮酸が優れていることがわかった。プロクトリンはミリモル濃度程度の高い濃度ならば飛行時間検出型質量分析器で検知できることがわかった。そこで血液サンプルを得、除蛋白処理前、処理後のサンプルを得て実験した結果、除蛋白処理前の濃度の高いと思われる状態のサンプルからもプロクトリンらしいピークは検出できず、血液中の濃度は恐らくこの検出装置で測定できる濃度より低いことが判明した。したがって、ストレスホルモンとして血中に放出されたペプチドの増減を確実に捉えるためには、かなり感度の優れた機器やサンプル処理を工夫することが必要であることが明らかになった。ひとつの方法としては新たにペプチド分析が可能なHPLCを購入することであるが、血液サンプルの成分の濃縮技術の開拓によっても突破できる問題である。本研究では今年度イセエビPanulirus japonicusでもこのストレス物質があるらしいことを確認した。これはこの物質が甲殻類に一般化できるらしいことを示唆しているので、今後の物質特定は機器の工夫のみならず、サンプルの工夫で新たな展開を見出せるものと期待される。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Tanaka K., Katsuyama T., Yazawa T.: "Dynamics of period-2 beating found in the cardiac event signal (ECG) recorded from undisturbed crayfish"Physiology and Pharmacology (Iran). 16. 15-20 (2003)
-
[Publications] T.Shinozaki, J.L.Wilkens, T.Yazawa, H.E.D.J.ter Keurs: "The Steady State F-Ca2+ Relationship in Intact Lobster (Homarus Americanus) Cardiac Muscle"J.Comp.Physiol.B. (in press). (2004)
-
[Publications] 田中克典, 矢澤徹, 勝山智男, 中谷勇, 音川実: "状態空間表示法による甲殻類心電図の解析-異常心拍の発生原因に関する研究-"法政大学多摩研究報告. 18. 83-96 (2003)
-
[Publications] 勝山智男, 矢澤徹, 清野健, 田中克典, 音川実: "イセエビ心拍間隔ゆらぎのスケーリング解析"法政大学多摩研究報告. 18. 97-108 (2003)