2003 Fiscal Year Annual Research Report
イシサンゴにおける単体性と群体性の差異に関する研究
Project/Area Number |
14540647
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
日高 道雄 琉球大学, 理学部, 教授 (00128498)
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Keywords | サンゴ / 群体 / 組織適合性 / 刺胞動物 / 自他認識 / クローン / キメラ / クサビライシ |
Research Abstract |
群体性のイシサンゴは、遺伝的に等しい破片同士は瘉合するが、単体性のイシサンゴでは、クローン同士を接触させても瘉合しない。イシサンゴの単体性と群体性の差異がどのようにして生じるのかを明らかにする第1段階として、単体性と群体性の差異が個体発生のどの時期に発現するかを調べた。 単体性のサンゴ、マルクサビライシおよびゾウリイシの組織片を培養すると、複数の口が形成され、複数の口をもつポリプや複数のポリプからなる群体性クサビライシが形成される場合があった。この結果は、ポリプ再生の初期にはクサビライシはまだ単体性の性質を獲得しておらず、群体性の性質を示すことを示唆する。これら群体的なポリプは、徐々に間の組織が死んで分離する場合と、癒合して1つのポリプになる場合がみられた。後者の場合、触手冠内に複数の口が存在し続ける場合と、複数の口が1つに統合される場合とがあった。このことは、単体性を確立する過程で、分離または統合によって単体ポリプが形成されることを示唆する。また同個体由来の再生ポリプ同士を接触させた場合、接触部で組織が癒合した。傘(anthocyathus)形成後のポリプでは、傘部は接触させても癒合せず、柄部では癒合した。このことから傘の形成と個体性の発現が同時期に起こることが示唆された。 同時に群体性サンゴにおける組織癒合の遺伝的コントロールを調べることも試みた。群体性のハナヤサイサンゴで、同じ群体より放出された兄弟プラヌラ幼生同士の間で接触実験を行ったところ、13群体由来の74ペアすべてが癒合した。この中には1群体由来の28ペアでの癒合も含まれる。親群体と子プラヌラ同士の接触実験を行ったところ、9組み合わせの18ペアで1例を除き癒合した。これらの結果は、ハナヤサイサンゴにおいても、群体性ホヤ類と同様、群体特異性遺伝子の対立形質のうち少なくとも1つを共有すれば癒合するという可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Hidaka M., Kobayashi N., Oshiro W.: "Colonial form of a solitary coral, Fungia sp.developed from tissue fragments"Zoological Science. 20(12). 1529 (2003)